鰯の独白

鰯は、鮪よりも栄養価が高いのです、たぶん。

2018年3,4月のMedium

 

シェイプ・オブ・ウォーター

映画『シェイプ・オブ・ウォーター』はとてもよかった。今の社会に当てはめてみても、感じいる場面がいくつも見出せるはずだ。筋書きや拵えが回りまわって古典的な結構だと思った。

エンターテイメントの原則である、‪教条主義に陥らないための表現の工夫が随所に施されている。‬

善悪の構図がはっきりしているのがいい。「盗人にも三分の理(ことわり)」が物語の当然になり、権力や支配の論理ばかりが強調される昨今、弱い側に肩入れできる構造の作品は稀である。これは「暴力や差別はよくない」と誰もが痛感できるように演出されている。それを端的に表しているのが、性行為の場面だ。

かたや一方的な欲望(情欲や征服欲)を解消する手段として、こなた相互理解の到達点として性行為が対照的に描かれている。そしてこの映画は、手探り状態からエクスタシーへと導かれる道があることも教えてくれる。つまり(AVや萌えキャラのアニメとは違って)、フィクションから性を学ぶことは決して不可能ではないのだ。

ともあれ、『シェイプ・オブ・ウォーター』は見所の多い、誰にでもお勧めできる傑作である。細部を確かめるため、もういっぺん観たくなるくらいだけど、あまり喋りすぎると先入観になりかねないから、これくらいにしておきます。

鰯(Sardine)2018/03/15

 

“Abegate”

財務省、公文書改ざん。

Ministry of Finance, tampering with public documents.

森友関連問題、再燃。

“Moritomo” related problem, relapse.

安倍政権、崖っぷち。

The Abe administration, a dilemma.

 

From the document before tampering, it can be seen that there was pressure from the Cabinet Office to the Treasury Department.

改ざん前の文書から、官邸から財務省への圧力がうかがえる。

In the process of selling state-owned land, the involvement of Prime Minister Abe’s wife is also suspected.

国有土地売却の過程において安倍昭恵総理夫人の関与も疑われる。

If it's overseas it is a scandal that leads to resignation of the Cabinet. But, the reaction in Japan is still dull.

海外ならば内閣総辞職につながるスキャンダルであるが、日本国内の反応はまだまだ鈍い。

I demand investigation of the truth in the Diet and the resignation of the Abe administration.

私は、国会での真相究明と、安倍政権の退陣を要求する。

鰯(Sardine)2018/03/14

 

タイトルを「アベゲート」に変更しました。

日本では、安倍昭恵首相夫人の名前をもじって「アッキード事件」と呼ぶ人も少なくない(命名山本太郎議員)。現政権は、当時の財務省の担当者に因んで「佐川事件」を定着させようとしましたが、さすがに普及しませんでした。

外電は見つけ次第、紹介していく所存です。鰯(Sardine)2018/03/21

 

The act of spreading salt in Japan depends on the reason for removing the filth.

“Kegare” in this case means “women”.

Women Barred From Sumo Ring, Even to Save a Man’s Life. (New York Times)

Japanese women ordered from sumo ring during first aid. (BBC News)

 Sumo chief sorry after women attempting CPR ordered out of ring. (AFP News)
 Sumo in Uproar as Women First Responders Ordered Out of Ring. (Voice of America)

My cat says, “In overseas coverage seems to focus on women who gave first aid.”

鰯(Sardine)2018/04/06

 

「けしからん」「たるんどる」歪み、腐敗する、日本の政治家と政治、そして行政

“Keshikaran” Tarundoru” Distortion, corruption, Japanese politicians and politics, and administration.

麻生太郎財務相、セクハラ報道の事務次官処分せず。 (タイムズ)

I won’t discipline mandarin over sex claim, says Japan minister.

4月14日、国会議事堂前には主催者発表で50,000もの人びとが集まった。(UPI、ブルームバーグ

Protesters in Japan call for “liar” Shinzo Abe to resign over scandal.

牛久の入国管理センターで10ヶ月に渡り拘置されていたインド人の男性が金曜、自殺と思われる状態で発見された。入国管理センターで亡くなった移民は2006年から数えて14人目、自殺は去年に引き続き2人目となる。(ロイター)

An Indian man who was held in Ushiku ‘s Immigration Control Center for ten months was found on Friday in a state considered to be suicide. Immigrants who died at the Immigration Control Center will be the 14th person since 2006 and suicide will be the second person since last year.

4/15(ロイター)小泉元首相のコメント。

Former premier Koizumi told reporters on Saturday he thought it would be difficult for Abe to win a third term as LDP leader.

“He has lost trust and whatever he says sounds like an excuse,” he told reporters.

ウォール・ストリート・ジャーナル 4/16

Japan’s Abe is facing slumping poll numbers and a sexual-harassment probe against a top government official.

Top Japan Finance Official Denies Sexual Harassment, Says to Sue Publisher

そして、2018/04/16のN.Y.Times

As Scandal-Tarred Abe Meets Trump, ‘the Situation Is Getting Dangerous’

“Even now the vultures are starting to circle. People are trying to figure out what comes next after Abe,” an assistant professor said, as Japan’s prime minister, Shinzo Abe,

と、財務次官のセクシャルハラスメントを問題視している(4/16 世界中に配信)。

で、4/15 ガーディアン紙も。

Japan’s prime minister, Shinzo Abe, is likely to resign in June after two cronyism scandals sent his approval ratings to an all-time low and risk damaging his party’s fortunes in elections next year, according to one of Japan’s most popular postwar leaders.

福田事務次官セクシャルハラスメントは世界中に配信された(4/16ロイター)。

It called on female reporters to come forward and contact the law firm if they were willing to cooperate with the investigation.

と、財務相・省の「手口」についても。

Junichi Fukuda denies the accusations but said he would leave finance ministry because it was impossible to do his job amid the furor.

ウォールストリート・ジャーナルによる、福田事務次官辞任の報道。2018/04/19

#MeToo hits Japan as top official resigns
A Japanese broadcaster says it will file a complaint against the finance ministry alleging a top official sexually

BBCは#MeToo と関連する形での報道。

LDP lawmaker calls sexual harassment whistleblowing almost ‘crime’

毎日新聞 April 24, 2018 (Mainichi Japan)

The vast majority of Japanese are indifferent to politics, and There is a tendency to hesitate about the story of politics.

日本人の大部分は政治に無関心であり、政治の話を躊躇する傾向があります。

Government skillfully manipulates the media. Repeat the intervention to deal with the problem.

政府は巧みにメディアを操作し、問題に対処するために介入を繰り返します。

It is necessary to tell more about the facts of Japan to various countries around the world.

この日本の実情を、世界に伝える必要があります。

鰯 (Sardine)2018/04/16

 

しかし、これらの報道から1年以上が経過しても、依然として安倍政権は安泰である。いったい日本はどうしてしまったのか? この国に、正義はないのか?

 

「1マイル競争」

コーチはトーマスを手招きして伝えた。

「トム、ボブのタイムはきみより2秒速い。明日の競技会、きみはボブのペースメーカーをつとめてくれ。」

トーマスは「わかりました、コーチ」と答えた。やるべきことは決まっている。トップをキープし、残り一周でロバートに先頭を譲ること、だ。

それが陸上競技部に所属する者のつとめだと、トーマスは自分に言い聞かせた。

 

競技会当日は曇天だった。トーマスとロバートは市営グランドに赴いた。ふだんは仲よく話す間柄なのに、ふたりとも何故か口数すくなく、レースが始まるまで黙ったままだった。

「次は1マイル走です、選手は準備してください。」と、係員が呼びかけた。

ふたりはスタートラインに立った。トーマスはわりと落ち着いていた。

『ラスト一周で、速度を緩めたらいいんだ。最後までがんばる必要ないんだ。』

そう思うと気もちが楽になった。

対するロバートは、緊張した面持ちだった。

ピストルが鳴り、選手たちがいっせいにスタートした。トーマスはすぐに集団から飛び出し、そのまま先頭を走った。

いくぶん湿った空気が心地よい。ずいぶん調子がいいなとトーマスは思った。だから先頭を走るプレッシャーも、それほど感じなかった。どうせラストでロバートに先を譲るのだから……。

そして、最後の一周にさしかかり、鐘が振り鳴らされた。

ペースメーカー役のトーマスは、外側に位置を変えた。コースの内側を、背後のロバートが追い越していく予定だった。

ところが、ロバートは出てこない。

不安に思ったトーマスが、後ろを振り返ると、ロバートは苦しそうに顔をゆがめているではないか。

「ボブ?」

すると、ロバートは短くさけんだ。

「行け、トム!」

トーマスは、何がなんだか分からなかったが、無我夢中で走った。他のランナーのことなど、まったく意識しなかった。ただひたすらに、ゴールを目指した。

ついにトーマスはテープを切った。

気がついたら1着でゴールを駆けぬけていたのだ。すると、背後からロバートが歩み寄ってきて、

「やったなトム、新記録じゃないか。」

と、チームメイトを祝福した。〈了〉

 

私は、こんな感じの掌編を小学校の高学年で読んだ記憶がある。下に掲げた記事に引用されている『星野君の二るい打』という道徳の教科書に収められた話を知って、『1マイル競争』をにわかに思いだしたのである。そこで、記憶をたぐり寄せながら書いてみた(コーチはどうした?とツッコむのはナシね)、昔と今では同じ道徳の教材でもずいぶん違うものだと感じるが、皆さんはどうだろうか?

なお、『星野くんの〜』は、先週聞きに行った前川喜平氏の講演会でも取り上げられていた。併せて読まれたし。

鰯(Sardine) 2018/04/18

 

なじめない

昨年できた市内のショッピングモール。

見晴らしのよいカフェでランチの時間。

玄米のごはん、きんぴら牛蒡と白和え。

無農薬の野菜。自然の素材でゆったり。

一面のガラス窓から眺めるビルの屋上。

ここさ大洋デパートの跡地なんだよね。

食べてるときに言うことじゃないなと、

自分を戒める、お行儀よくしとこうと。

(でも窓外の景色は撮ってしまったよ)

 f:id:kp4323w3255b5t267:20190714171543j:plain

夕飯すませたら近所のスーパーで買い物。

帰りがけスタバに寄ってドライブスルー,

こぎれいなスタッフが微笑みかけてくる。

屈託なく、ごく自然な「こんばんは」。

戸惑いを隠せないまま「こんばんは」。

機能的な動線に無駄なものは存在せず、

スマートな接客も予め設定された構造。

隙のないサービスになじめない中高年。

どこかいい加減な余地がないかと探す。

ほんとうにざっくばらんだと困るくせ、

ちょうどいい塩梅の居場所を探してる。

なじめずに、なじめずに、なじめずに。

鰯 (Sardine) 2018/04/30

 

2018年2月のMedium

書き換えはほどほどに

私のブログ『鰯の独白』のアクセス数が今年に入って倍増した。訪問者の割合はGoogleからが6割弱、Yahoo!からが2割強、残り1割がTwitterの告知からである。

当初、私は「はてな」の一言紹介欄で、

短編小説、音楽寸評、エッセイ、その他もろもろ、基本的には思い出話。

と自己規定している。このうち短編小説は反応のあまりの少なさに懲りてやめてしまったけど、音楽寸評は今も月イチのペースで、気ままに投稿し続けている。

音楽寸評で人気のエントリーは、いにしえのロックについての記事である。有名どころを扱ったものより、やや有名くらいの対象が注目されやすい。アーティスト名をGoogleで検索すれば、私の記事が最初のページに表示される場合もある。狙ったわけではない。検索上位に来るまで凡そ2年はかかる。どうやら音楽性を分析した記事よりも、私が友人に勧める時のような調子で、気軽に書いたものほど多くの方々に読まれているようだ(※蛇足だが、「はてな」の注目記事に採りあげられたことは二、三回しかない)。

先日も私は上掲の記事を三つまとめて投稿したが、その際、Twitterに余計な説明を書き加えた。

  1. 好きな音楽についてを書くことは楽しい。だって基本的には、なぜ好きか?を書けばいいんだもの。ただ、数年後に読んでも恥ずかしい内容にならないように表現は工夫する。だってぼくの文章を読んで、音楽を嫌いになってほしくないから。グーグル検索で1ページ目にかかるようになると「迂闊なことは書けない」と思うよね。
  2. 自分のブログ記事が「ゴミみたいな検索ノイズ」に堕してしまわぬように。「インターネットでまともな情報を掴むことができなくなった」と嘆かれる原因にならないように。資料としての役に立たなくても、何かぼくなりに与えられるものはあるんじゃないかと、「熊本県在住の音楽好きさん」は思うわけです。
  3. 書いてから二、三日は、誤字脱字や内容の誤りの訂正、余分を削り、不足を補う作業を行います。読み直しを重ねて、ある程度納得できたら、それ以上手を加えないようにします。更新し過ぎると、書き始めた当初の意気込みが文章から感じられなくなるからです。
  4. <言葉に対し、細心の注意を払っていらっしゃると同時に、ご自分の感じたこととの擦り合わせを綿密に何度もされていらっしゃるからなのだな>との感想に「過分なお言葉、恐縮です。何度も添削するのは、編集者が不在なゆえ。セルフプロデュースは難しいですね。たまに自分の中の編集者がボツを出すことも(あります)」と返答し、
  5. クラシックやジャズ(のレヴュー)は大変そうですね。うるさがたが大勢いそうで、それこそ迂闊なことは書けません。ロックも最近は資料主義に傾いており、やたらと時代考証の正確性を要求されるようになりました。ともあれ、どのジャンルにもめちゃくちゃ詳しい御方が大勢いらっしゃいます。ぼくなぞ足元にも及びません。と付け加えた。

これらのツイートを書いた動機は、〈安倍首相の予算委での質疑応答からうかがえる、エンゲル係数の無理解〉と、それに呼応したかのように、Wikipediaの「エンゲル係数」に関する記述が、論戦の翌日に(政権よりの解釈に)二転三転したという、インターネット上のちょっとした騒動が背景にあったからである。詳しくは下掲の記事を参照されたい(元記事はJ- cast。現在は削除されています)。

エンゲル係数ウィキペディア書き換え合戦 首相答弁直後に...官邸の陰謀説まで(J-CASTニュース
国会でエンゲル係数をめぐる議論が行われた直後、ウィキペディア(日本語版)の「エンゲル係数」の内容が、あるユーザーによって書き換えられたことが注目を集めている。

つまり、私が心に留めておきたい事は、

インターネットに発表したテキストは、その大半が書き換え可能であるため、容易に添削が可能である反面、内容を改ざんすることもまた容易いということだ。

書かれた内容の信ぴょう性を担保するものは何か?投稿者の誠実さと責任感に帰結すると考える。それはブログ記事のみならず、このMediumにおいても同様で、投稿者みずからが信頼を築きあげなければならない。でたらめな投稿を繰り返せば、信頼は直ちに損なわれる。

私は、よく読まれる記事を定期的に巡回してはメンテナンスしている。加筆修正も必要最小限に施すが、最初に投稿したときの主旨が変わってしまわないよう気をつけている。前に読んだときと違う?と読者が不審に思うような変更を、徒らに重ねてはならないと思う。

私は本を書いたこともなければ出版社に勤めたこともない。が、新聞・雑誌・書籍の信頼性について、をよく考える。

紙媒体はいったん流通したら、容易に回収できない。だが、だからこそ、編集者をはじめとする大勢の人が目を通し、複数回の校正を経て、ようやく発行されるのだ。言わずもがなの事だが、そのプロセスが信頼を築いている、と言えよう。

私たちインターネットのユーザーは一人ひとりが作家であり、編集者であり、発行人である。そのことはいつも意識しておきたい。間違いを恐れるがあまり、投稿を億劫がってはならないが、気安く投稿したり、出した記事を簡単に引っ込めたり、手前に都合よく書き換えたり、削除してなかったことにしたりするのは慎むべきである。それらは読み手の信頼を損なうだけではなく、書き手が書くに必要な「自信」をも失う所業に他ならないから。

慎重に、しかし決然と投稿すべし。 鰯(Sardine)2018/02/02

 

フレンズ

親同伴ではなく映画館で最初に観た映画は、アル・パチーノ主演の『セルピコ』だった。面白かったが、中学生にはちと重すぎたので、次に観るのは軽く明るく爽やかな青春映画を選んだ。

つもりだったが、

リバイバル上映の『フレンズ』も、やはり重たい内容だった。あまりにも印象が強烈だったものだから、併映の(お目当てだった)『小さな恋のメロディー』を子どもっぽく感じてしまった。ちなみに、一緒に観に行った友人は『フレンズ』の間ずっと寝ていた。

オープニングでかかる音楽も印象的だった。映画館でシングル盤を買い求めた。エルトン・ジョンの「フレンズ」。

バーニー・トーピンの書く歌詞がまたいい。“ Childhood fly”などという言葉の選択に、SF好きなセンスがうかがえる。

上掲の、ポールとミシェルが海岸で手をつないでいる写真は、シングル盤に同封されていたインナースリーブである。一枚ペラ、裏には何も印刷されていない。

私は写真を貼ったアルバムの中に、これを保管していた。肝心のドーナツ盤はとうに紛失しているというのに。

典型的だけど、

見ているだけでせつなくなる、

束の間の青春を象徴するような写真だ。

鰯(Sardine)2018/02/03

 

エロス

先日、こんな記事を読んだ。

イギリスのマンチェスター市立美術館が、J. W. ウォーターハウスの《ヒュラスとニンフたち》(1896)の一時的な撤去に乗り出し、騒動となっている。美術手帖 2018/02/02】

詳細は記事を読んでいただくとして。私は正直な感想をここに記しておきたい。

  1. 公共施設において、その展示物が誰かの感情を害するものであれば、たとえ対象が一人であろうとも、撤去することを検討しなければならない。
  2. ただし、どんな表現形態であれ、芸術は人が鑑賞することによって成立するものである。人目に触れない作品は、芸術として認知されることもない。
  3. ファインアートからポップアートにいたるまで、表現の根源にエロスは抜きがたくあり、避けては通れない。

私は、エロスの欠如した表現に、魅力を感じない。自分の表現(そう、今ここに記すテキストを含めて)から、エロスが無くなったと感じたら、文章を書くのはやめようと思っている。

私は基本的にフェミニストである。だがフェミニズム表現の自由を、天秤にかけるような愚考はしない。私は自然人でありたいと思う。人間性の欠した一般のモラルには従わない場合もありうる。

この作品に描かれた、若き王を池に引きこもうとするニンフたちの姿が、はたして<女性を「受動的な着飾り」や「ファム・ファタル」とする、「非常に時代遅れ」な表現である>ものなのかどうかは意見の分かれるところだが、美術館の所蔵庫に収められてしまっては、議論の対象にもならない。人が見ない絵画など絵具の塗られた板でしかない。この絵を見て不愉快に思う方は少なくなかろうし、媚態だと捉える方も多いだろう。私的には、女性の描かれ方がステロタイプであるように思える。が、しかしそれは上の画像を見たからこそ言えることなのだ。

少なくともこの絵は、劣情を煽るために描かれた「ポルノ」ではないと思う。

嫌なら見なければいいなどと陳腐ことは言わない。が、美術館の展示であるのなら、ゾーニングが成立した状態であるとは言えないか。もし「それでもこの絵の描写は怪しからぬ、だから排除すべきである」とエスカレートするなら、それは焚書と何ら変わらない。アート無罪と言いたいのではない。しかし、度の過ぎた追及は、表現の幅を狭め、しいては社会を停滞させる活動にもなりかねない。

文化はどうあるべきか。それは私たち人類に課せられた普遍的命題である。だからこそ、せっかちな結論を求めることは避けるべきである。

私は大まじめにエロスを称えたい。それは古典であり、かつ前衛である。社会における表現の在り方は常に問われるべきだが、エロスというテーマ自体は永久に古びないし、日々更新されるべきものであると考える。なぜなら、

私は、森羅万象すべてに“Eros”を見出す者だから。

鰯(Sardine)2018/02/04

 

母性に関する歌について

認識とは更新されるものだと、最近つくづく感じたことがあって。ちょうどいい機会だから、記しておこうか。

立派なあなたの母になる為に、私は出来る限りを尽くしてゆく所存です

その歌がBGMで流れてきたとき、思わず「はぁ?」とふり返った。私は耳を凝らして次の展開を聞き漏らすまいとした。

母はあなたの母になる為に、真面目に貯金も始めます

次の二行では、喉がカラカラになった。

ご飯の美味しいところは全部、あなたが先に食べて下さい

母より綺麗で気立てが良くて、強い彼女を連れて来なさい

そして、ダメ押しの一行……

歌詞の断片から検索をかけ、それがシンガー・ソング・ライター阿部真央さんが昨年2月に発表した「母である為に」という歌であることを知った。

その歌がなぜ私の耳に引っかかったか。言うまでもない、最近タイムラインを賑わしている、のぶみ氏の「あたしおかあさんだから」を連想したからである。もちろん歌の制作過程も、歌われるに至った背景も、ずいぶん違う。そして歌詞に表された、言葉の強度は、阿部氏の「母である為に」のほうが圧倒的に強い。

しかし、歌から伝わる“as a mother”の情念は、聞いていて息苦しくなる。

それは、「ぼく」が男性であるからか?

これを、女性が聞いたらどう思うだろうか?

感想は、人それぞれだろう。共感も、反発もあるだろう。

Youtube阿部真央さんオフィシャルのPVがあった。

ぜひ観て、聴いて確かめてほしい。

歌詞の良し悪しをあげつらいたいのではなく、音楽性を取りざたしたいわけでもない。

が、発表された昨年2月に「母である為に」を聞いていたら、果たして私はこれほど耳を奪われただろうか?

認識は日々刻々と変わってゆく。昨日まで当たり前だと思っていたことが、今日には違って感じることもある。

以上、Twitterで連続投稿したものを並べてみた。主語を私に変更し、二、三箇所あらためた。

Twitterで、「のぶみの歌詞を呪いというんなら、『母である為に』だって同じだよ。むしろ、山岸凉子のマンガなみにおっかない。そこスルーするのはフェアじゃないんじゃ?」などと書いたら、さすがに反論が来たかもしれない。

けれども私は「狩り」をしたいわけではない。あれはダメ・これも良くないといった、表現の取り締まりに関与したくはない。

ただ、「母である為に」を聴いたときの違和感を、自意識の変化についてを控えておきたかったのだ。

創作物は、作者の手から離れたと同時に、さまさまな角度から解釈される。賞賛もあれば批判を浴びることもある。本人の意思と関係ないところで、不本意な評価が下される場合も。だけど作品の独立性は担保されるべきだし、創作の背景を斟酌しすぎてもよくない。表現の自由と同様、感想の自由もある。

私は、一個人の作った歌について注文をつけるつもりはさらさらない。が、日本社会が、この歌に表された母性の表れや個人的な覚悟を、滅私や自己犠牲といった精神論で讃め称えるようであるなら、それは違う! と批判するでしょう。‬ 鰯(Sardine)2018/02/10

 

高速で〜私だけかなあ。

高速で、小山を切通ししたような場所にさしかかっていると、時どき「えっ、こんな急勾配どうやって登るの?」って思うような側道に出くわしませんか?

私は見るたびにその狭そうな道を通ってみたくなる。まあ、通ったところでどうなるものでもないんだけど(笑)。こんなこと考えちゃうの、私だけかなあ。

追記:もっと急勾配の坂道を見つけたので、これも貼っておきます。

鰯(Sardine)2018/02/20

 

耳にした瞬間からすでに懐かしく感じる音楽がある。

小川美潮「窓」はそういった曲だ。

この素朴で、しかも雄大な歌は『4to3』という1991年発表のアルバムに収録されている。

ということは27年前の作品である。

四半世紀を過ぎているとはにわかに信じられない鮮度を保っている。まるで昨日できたばかりの音楽のようにみずみずしい。

ピアニシモの歌いだしはシューベルトの歌曲やランディ・ニューマンのようだ。が、そのひそやかなワルツは次第に膨らみ、やがて大波のようなうねりを伴って聴き手の意識を包みこむ。

プログレッシヴと形容したくなるような雄大なスケール。作曲と編曲を担当したMa*Toの手腕が光る。その複雑な構成を故)青山純の豪胆なドラムが一手に束ねる。そして(小川が在籍したバンド)チャクラ時代の盟友、板倉文の満を持したギターソロで最高潮に達する。やがて楽曲はたっぷりと余韻を残しつつも最後の一滴まで搾り尽くして収束する。

後世に語り継がれるべき名バラードとの意見もみたが、私は大げさだとは思わない。『4to3』は日本語で歌われたポピュラー音楽の頂点に達した傑作であるし、その中でもとりわけ異彩を放つのが、この「窓」なのだから。

これを聴くたび私は、人と人との出会いやら恋情やら悩みやら別離やら、それら諸々ぜんぶをひっくるめて人生なのですよ、と教わっているように感じる。

そして聴くたびに新たな発見があり、充足を得られるのだ。

YouTube市川準が監督した『4to3』の映像作品がアップされている(下)。また、これを基にレトロ調にアレンジされた動画もあるので、そちらも観てみるといい。音楽の世界観を壊さずに引き立てている、これも秀逸な作品である。

いつか花があふれだす

かがやく春が来ることを

そう、時は流れ、季節はめぐる。吹く風の中に、春の匂いがかすかに漂う。

2月は今日で終わりだけれども、私はこの歌を聴きながら来る3月を迎えたい。

鰯(Sardine)2018/02/28

 

2018年1月のMedium

覚書:表現の自由について

今世紀に入ってから人権の意識が大きく変わった。社会全体はもちろん、個人的にも。世紀末前後をふり返ってみれば今よりずいぶん無頓着だった。人は平気でひどいことばを発し、差別心をあらわにしていた。昨今おおぜいの人が意識的になったが、それは人権を侵害された者の声が可視化されたことによる。

‪インターネットの普及が人権意識を促した。被害を受けた立場からの発信を受け取ることによって、人権侵害とは何か、具体的に何が良くないのかを考える機会が増えた。その結果、昔はセーフだったのに今やアウトになった表現も多い。そのアップデートに対応できずに窮屈さを覚えるばかりの者もまた多い。‬

自由な発言が制限されたと感じ、表現の自由を守れと訴えるものも多い。が、彼らのいう自由のほとんどは〈性と暴力の領域における〉であり、政治的な抑圧には驚くほど無頓着である。ともあれ社会に向けて何らかを表現する場合、他者とのコンフリクトは避けられない。表現者からの一方通行だった時代は終わった。

インターネットの双方向性は、言いっ放し・やりっ放しを許さない。発表者からしてみれば、難儀な時代なのかもしれない。だが、コンフリクトは過去にもあった。今は無視したくとも無視できなくなっただけのことだ。ターゲットと設定した以外の層がどう反応するか、送り手は予めシミュレートしなくてはならない。

今は他者への想像力を試される時代だ。他者の領域に侵害していないかを配慮することは、自由な表現を制約することと同義ではない。むしろ、より高次の表現に至る橋頭堡ともなり得る。萎縮せずに堂々と発表すればいい。が、その表現が他者の苦痛に抵触した場合、批判は免れぬことを覚悟した上で。

昔は良かった配慮する必要がなかったと述懐するような時代遅れの表現者は有名無名を問わず前線から退くべきである。

鰯(Sardine)2018/01/09

 

【附記】

この記事に限ってのことだとは思うが、Statsの数値が定まらない。

投稿してから半日で、80以上のviewsがカウントされていたのに、一日後の今現在34である。

4名の方々からclapsをいただいているのにfansは0。半日前は4と反映されていた。

私はStats画面をMediumの入り口にしている。一覧表になっているので記事を検索しやすいのだ。その上、どの記事が多く読まれているかも一目瞭然で分かる。最近では昨年春に書いた「クレジット」という記事にアクセスが集中していた。

私はTwitterで昨日このように告知した。

ツイートアクティビティは、インプレッション6,064、エンゲージメント総数222、リンクのクリック数93、リツイート18、いいね18である。この数値の信ぴょう性がどれほどのものかも、また定かではないが。

何れにせよ閲覧数に相当するviewsが34というのは、Twitterの反応と比較すれば、あり得ない数字だと思う。

もちろん私自身が頻繁に訪問し、添削したり追記したり更新し直すから、数値の変わる可能性は大いにあるだろうが。

追記:午前7時の時点でviewsは何と21まで下落、しかし45分後には55まで回復……って、株価じゃないんですけど⁈

さらに追記:午前10時の時点でのviewsは94だけれど、パソコンからReferrersを開いてみると、Twitterから130views、その他19viewsがカウントされている。計149と94の誤差は何なんだ⁇

が、その日の午後150viewsを超えた時点で追跡をやめた。

いったいMediumはStatsをどのように管理しているのか。

他の記事の数値が、こう極端に変動したことはなかったように記憶する。減少は該当記事のみの現象である。怒ってないから、説明してもらいたいものだ。

もっともMediumjapanなき今どこに訊けばよいのか。やはりアメリカ本社へ英文で質問するしかないのか。面倒だな……

映画『七人の侍』、津島恵子木村功がお花畑で逢瀬の場面。

鰯(Sardine)2018/01/10 4:44投稿

 

Spotifyをインストールしてみた

(写真はシャーデー・アデュ。本文とは関係ありませんが好きな写真なので。)

私はスマフォにほとんどアプリを入れていない。TwitterはてなブログGoogle翻訳とMedium、あとChromeを検索用、それがすべてである。

ちょっと前から気になっていた。Twitterの音楽好きなアカウントが、Spotifyから引っ張ってくるケースが増えたせいもある。ものは試しとプレミアム無料一週間をお試ししてみた。

あー便利だ。もう引き返せない。

私はApple Musicを利用していない(例外は数年前にU2の“Age of innocence”を無料ダウンロードした時)ので、今まで「聞きながら他のアプリを操作」していなかった。YouTubeで何か見聞きする際は、その都度TwitterやMediumを中断していた。

しかし、もうこれからは違う。私はいま「ベスト・オヴ・バート・バカラック」を流しながら、このテキストを打っているが、あーッ便利すぎて堕落しそうだ。

何よりも検索しやすい。アルバム単位で楽曲を探せるのは(私みたいなロートルには)ありがたい。例えば先ごろ惜しくも亡くなったフランス・ギャルを偲んでみようか。

open.spotify.com

追記:この曲の作者、ミシェル・ベルジェについては下掲記事を参照のこと。

aomori-france.com

あーこのシンセサイザーソロ、スティーヴ・ウィンウッドを彷彿とさせるなと思えば、今までスマフォで聞けなかった、

open.spotify.com

YouTubeでは管理の厳しいアーチストが、即座に呼び出せる。ああそうだ、こないだゴドレーとクレームの『フリーズ・フレイム』が唐突に聞きたくなったが、あれもYouTubeにはアップされてなかったな……

open.spotify.com

あるじゃないか。んじゃ、フランスに戻って。ミッシェル・ポルナレフで、デモの時には必ず合唱される歌があったよね?みなバラディソに行くだろうって内容の、

ハハ、彼の再生回数第1位だったよ。

と、初めてYouTubeを観たときみたいに、今夜は歌探しに夢中になっていたのです。

あ、こないだラジオでかかってた、♪タバコがぷーかぷーか〜、って歌も聞いてみよう。国産だぞ。

ぶじ30秒間試聴ができましたか?いや、この後に転調するところが凄いんだよ。音楽の勝利って感じで。

ま、きりがないので、このへんでお終いにしますけど「音楽を聴くのに動画は不要だな」が今回の発見でした、ではね。

軽薄鰯 (Sardine)2018/01/16

 

とうぜん、殆どのアルバムがリストアップされています。

Sade, can also hear almost all songs with Spotify.

下のプレイリストはシャーデー本人の投稿と表示されておりますが、さて?

Although the playlist is shown as Sade herself’s post, true?

open.spotify.com

Anyway, this kind of photogenic singer is rare.

これほどフォトジェニックな歌い手も稀だね。

ミーハー鰯 (Sardine) 2018/02/05

 

男らしく?

男らしくない、と何度言われたことか。

ケイスケ、男らしくないゾと言われた日にゃ、ケイスケって名前の響きにまで嫌気がさしていた。

男らしく、の在りようが分からなかったのさ、若い時分の私は。

ビートルズの4人が歌ってましたっけ。

ボーイ、その荷を背負っていけ長い間。

 

男らしさの檻に囚われた男の子は、この狭い場所から出してくれ!と叫ぶ。

一人前の大人の男になるためには、さまざまな儀礼を通過しなければならない。

飲酒、喫煙いうに及ばず、男たるもの、女を抱かねば一人前とは言えまい?と。

童貞喪失の強迫観念。十代の早いうちに植えつけられる概念。先輩がからかう、同級生が自慢する、遅れをとってはならないと焦りばかりが募る。テレビが雑誌が、インターネットが、性交の甘美さをのべつ幕なしに煽りたてる。

だがボーイ、気をつけたまえ。女性は君の性欲を満たすための道具ではないぞ。

君は肝心かなめの初手から間違えているんだ。女性に出会う前に、相手の気持ちを確かめる前に、手前の欲求を処理することばかり優先的に考えているだろ?

それを拗らせた挙げ句の果てに「モテない俺たちに女をあてがえ」と喚くのは、あまりにも惨めじゃござんせんか。あのさ、童貞を捨てたからって、急に男らしくはならないんだよ。第一、童貞を捨てるって言い草はなんだい。女を性の対象としか看做していないことがモロバレじゃんか。そういう尊大さ、見抜かれているんだよ。その自己中心な考え、そろそろあらためたらどうなんだい。

かつて、男は黙って◯◯というキャッチフレーズがあった。黙っていれば女が寄り添ってくる(都合の)いい時代が……

あるわけないだろ。黙ってたら、伝わらないよ。

いいか、君はとうに見くびられているんだ。自尊心を守るのに精一杯で、相手を慮る気持ちの余裕がないヤツだと。「されンのは好きだけど、するのは嫌」だって手前勝手さが言葉の端々から感じとられるの。だって相手の気持ちを理解しようと努められるならば、少なくとも相手の嫌がることはしないよね?

SNSでいうならマウンティングとか。

抗う口を塞ぎたい目的がありありの。

いちいちクソリプ(クソみたいなリプライの意味)飛ばしてるんじゃねえよ。

みっともないし、情けない。同性として恥ずかしい。そういうコソコソした振舞い、頼むからやめてくれ。

それこそ、男らしくない、だろ?

痴漢する男が後を絶たないから女性専用車両を設けなけりゃならないし、暴力を振るう男が絶えないから #MeToo というムーヴメントが発生するんだ。つまり、

原因あってこその結果じゃないか。男性が生き辛くなった理由を女性に責任転嫁するんじゃない。首を絞めているのは他ならぬ君、すなわち男性自身なんだよ。

 

たぶん君は、期待される男性像とやらに囚われすぎているんだ。その期待は誰も望まない、幻想に近いものだってのに。

女性を、男性の従属物のように考えているかぎり、君にとっての社会は地獄にも等しいだろうな。だけどボーイ21世紀だぜ? 日本も真の意味での近代国家にならなきゃならない段階だろうに、何、その前近代的な思考法は。いい加減そこから脱却しなよ。

世間がこしらえた男らしさの虚像から。

男らしくのみならず、女らしく・子どもらしく・夫らしく・妻らしく・日本人らしく、らしくらしくの枷を外してみないか?

そして、背負ったその荷を降ろし給え。

東映やくざ映画に出ていた菅原文太を私はそれほど好きではなかった。でも、亡くなる直前に「オール沖縄」で応援演説した時の、覚悟を決めつつも、ひょうひょうとした構えには心底痺れたよ。

どうせ男らしくあるなら、あらねばならぬのなら、私は文太兄ィみたくなりたいものだなあ。鰯(Sardine)2018/01/25

 

【追記】

このブログに書き起こしと動画が載っていました。ご参照ください。

kiikochan.blog136.fc2.com