鰯の独白

鰯は、鮪よりも栄養価が高いのです、たぶん。

古いかどうかは自覚できない

無料でシングル一曲切れるというTuneCoreのキャンペーンに乗っかって、どこにも収まらない感じのナンバーを5/4にリリースしました。イワシ唯一のエレクトリック・ボディー・ミュージック(EBM)で、題名に'84とありますが、正しくは1985年の作品です。
ローランドTR707でバックビートを鳴らし、シーケンシャルサーキット・プロフェット5を即興でテキトーに弾き、莫迦なことを喚き散らしただけの、飽きる前に終わる2分14秒。

それではどうぞ、「ガールハント'84」!(2024年5月4日、Blueskyでの投稿)

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オクヤマさんから「ワカメ」と呼ばれていた頃

このこっそり配信したシングル、個人的には好きなのである。これまでにリリースしたアルバムが基本的にきまじめな作品だったので、ここらで箸休めになるような、おふざけトラックを置いておきたかったのだ。たとえ誰からとりざたされなくても、イワシにはこんな側面もあるんだと示しておきたくて、ね。

ただ、あらためて聞くと「古いなあ」と思う。ドイツのDAFをイメージしたナンバーだけど、音色とミックスの古さは致命的だ。80年代中期の典型的なサウンド真空パックしたような音楽だ。

よかったら聞いてみて。

open.spotify.com

まぁ、こんな具合だ。

先日お亡くなりになったスティーヴ・アルビニさんは、ノイズリダクションのdbxフォーレターワードで罵るほど嫌っていたそうだが、この「ガールハント'84」に限らず、TEAC234による私の録音は、dbxによる音質の均一化が甚だしく、どれもが平面的に聞こえてしまう。

最新のDTM機材や、あるいはAIを使ってリミックスし直せば、ある程度は今風のサウンドになるんだろうが、機材やソフトに費やせる予算はないし、あったとしても作業する時間も気力もない(信じてもらえないかもしれないが、たんに再リリースするだけでも私的にはかなり労力を費やしているのだ)。というか、むかし創りあげた作品には、むやみに手を加えたくない。平たくいえば、今様に整えたい気持ちが皆無なのだ。

私はなんと意地っ張りなんだろう。

それに、たとえ今の耳と感性でリミックスしたとしても、決していいものにはならないと思う。ブラッシュアップしたところで、過去の歌唱や演奏をより輝かせられるとは思わない。録音直後にミックスダウンしたときの集中力に勝るものはないし、これで良しとした判断を尊重したい。それが作り手としての率直な気持ちだ。

じつは……

自分の音楽が古いかどうかを自覚できない

おりしも、Twitter Xのタイムラインに、こんなツイートが流れてきた。

悪いけど古臭く聞こえると思いますビートルズ。わしらのような老人には「最高のもの」と刷り込まれてしまってるからそのあたりの判断がつかなくなってると思う。

(Andy@音楽観察者さん)

まさに! この意見にすべてが集約されている。私なんか「ビートルズが最高」で価値観が固着してしまっている典型だからなあ。

AppleMusicで「同じタイプのアーティスト」欄をみてごらん。岩下啓亮Sardineは完全にオールディーズのカテゴリーに入れられている。あたりまえだ、約40年前に作ったものなんだ。オールディーズ以外の何ものでもない。今さら新しい衣装をまとったってムダだ。老人が若さを装う様子ほど痛ましいことはない。なぜなら私はもはや、自分の古さを認識することも、解消することもできないのだから。

もしもイワシの古くさい意匠にガマンできないという方がいれば、私の代わりにリミックスしてみてほしい。なんならマスターのCDRをお渡ししてもいいよ。自分とは違う、誰かの手によって異形が作られるなら、それもまた悪くない。

ガールハント'84」なんか、手始めに最適じゃないか? 各パートを分解したり新しい要素をつけ加えたりと、いろいろ遊べると思うぞ。 鰯 (Sardine) 5/26