色調はヒプノシスを多少意識した
2001年秋に制作した『変身』は、そのころ新しく導入したベリンガーのミキサーとCD-Rを併用して録音した。音質がクリアになった反面、低音域が瘦せている印象があったので、2025年版で補正した。また、基本となる11曲の構成は変更しないまま、「Any other man」の弾き語りバージョン、ウェット過ぎるので没にした「Oh, No ことばにならない」の初期テイク、3つのアウトテイクの断片をつなぎ合わせた「メドレー:もっともっと生きるチカラをあなたのクスリで」、打ち込みリズムが全体から浮くので没にした「旅に出よう リズミックバージョン」の4曲を新たに加えた。これでアルバム『変身』の全体像がより明確になったことと思う。なお、新装ジャケットの写真は、遺跡発掘の代理人・太郎ちゃんが府中市にて撮影した。
『変身』はタイトルを『東京』にしてよかったかもしれない。11曲のどれもが、街の情景を浮かびあがらせるから。
『変身』をつくった動機は単純で、「そういえばオレはまだ、ストレートなラブソングをあんまりつくってないな」と思ったからである。ならばいっちょうつくってみるかと書きはじめ、ノート三冊分くらい歌詞を書き、かなり短い期間でこの11曲を録音した。が、乏しい恋愛経験を元にしているため「これじゃ自分の感情が丸出しじゃないか」と、あとで聞きかえすのがたいへん恥ずかしかった(いまだにそうだ)。けれども、これほどまとまりのある作品集は自分のなかでも稀だ。ぜひ、制作した2001年当時のムードをそのまま感じとっていただきたく、今回『変身』をリリースした次第である(2024年版より転載)。
最初の印象がよくない相手。しかし気になる。憎まれ口をたたきながらも、男はいつのまにか女に惹かれている。「オレのこと好きじゃないなら他をあたれば?」という突き放した態度は、他の曲でも頻出する「ふてくされ男」のポーズ。ホントはもっとオレの方を向いてくれと願っているくせ、素直じゃないヤツ。長くうねるメロディーとヒーカップ唱法はジュールス・シアーの影響だ。切れ味勝負のロックンロール。
I saw you Baby blue
ちょっとだけ目を離してたら
その瞬間
誰だ
おれの椅子でタバコふかしてるのは
Kiss me Baby please
油断もスキもありゃしないぜ
まったく
誰か
おれの居場所を奪おうとしている
これはずっと治らないな
きみは病気さ
Any other man Any other man
どこか欠落してる
気持ちを満たす
Any other man Any other man
I know you Baby blue
こんなことはもう慣れっこだよ
平気さ
誰と
楽しそうに喋っていようと
Kiss me Baby Please
いつものことさ
傷ついちゃいられないよ
いちいち
誰が
おれのベッドで
這いつくばっていようと
これは一生、治んないなって
きみはいった
Any other man Any other man
今夜どいつが空っぽの
うつわを満たす
Any other man Any other man
I like you Baby too
そんなふうにふるまってられるのは
いつまで
おれは
きみの傷害保険なんかじゃないのに
Kiss me Baby please
ときどきは戻っておいで
待っているから
誰が
きみの心まるごとさらっていこうと
かならず帰ってくれるなら
Any other man Any other man
星の数ほどオトコを
カウントするがいい
Any other man Any other man
恋の数だけきみは
きれいになればいい
Any other man Any other man
もうどれくらい指折り数えた もうどれくらい待ち続けた
溢れだすそうだ流れ出す涙 漏らすため息に窒息しそうだ
今日のこの星は 少しだけくたびれる
街に響くは恋の歌
ありふれたことばかりだ
考えてほしいといってるようだ
ぼくやあなたに なるべくみんなに ああ
もうこれ以上必要ないくらい もうこれ以上なくたっていい
今さら誰かが上書きしなくても もう十分さ筋書きは読める
ちょっとだけ余白が欲しいと思ってた
街に響くは恋の歌
あけすけなことば綴った
抱いてほしいと願ってるのか
ぼくやあなたに あまねくみんなに ああ
もうどれくらい愛してるっていった もうどれくらい星の数くらい
誰もが彼もが悲しみを抱えてる 満たされぬ憂鬱を持て余して
今日もこの星はなんとか回ってる
街に響くは恋の歌
響き渡るは誰の歌
あなたが好きといっているんだ
ぼくやあなたに それともみんなに?
ラララ......ラララ
街に響くは恋の歌
それよりぼくは あなたの声が聞きたい
だんだん自分が自分でなくなって
なんだかぼくがぼくじゃなくなるよ
カンタンにきみは近くにやってきて
頑丈に閉めた扉を開いた
昨日 鍵を忘れた
今日 駅で定期券おとした
どっかおかしいな ふだんと違う
ふわふわ浮ついて たぶん Heaven 明日
変身したんだ陽気で能天気
なんだか以前のぼくじゃないみたいだ
心臓の中に羽が生えてきて
血管の中にきみが泳いでいたんだ
ヘンテコな柄のシャツ着てみたり
包丁で指の先 切ってみたり
どうしたんだ おい 冷静になりな
みんなだって気づくさ「おまえヘンだよ」
Ahh
きみのせいさ あまりにも無防備な
きみのせいさ Ah, 罪はないけど
存在するだけで 犯罪ものさ
だんだん自分が自分でなくなって
なんだかぼくがきみみたいなキャラになる
カンタンにきみは自然にふるまって
感情を秘めた言葉 引きずりだした
だんだん自分が自分でなくなった でも、
そういう自分が好きになっているんだ
Hey
華奢な指先をみていた はにかむ笑顔みつめた
私の好きになるひとは みんなどっか似ている
どうして笑っていられるの 楽しかったっていうの
好きだといってくれたひと みんな私以外を選ぶ
Oh, No これから先どうしよう Oh, No どこへ行こう
Oh, No 考えられないよ 今はあなたしかみえない
優しい瞳をしていた 恥ずかしそうに喋ってた
私の好きになったひとは 面影だけを置いてゆく
Oh, No 逢いたくなったらどうしよう Oh, No さびしいよ
もう 連絡できないの それをあなたにはいえない
限られた場所 わずかな時間 探し求めていた
許されないと 分かっていても 愛を育てていた
どうして帰ってしまうの 私をひとり残して
好きだといってくれたひと ぎこちなく抱きしめる
Oh, No これからずっとどうしよう どうやって生きていこう
Oh, No なにも欲しくない 今はあなたしか要らない
Oh, No Oh, No
Oh, No ことばにならない 二度とあなたに逢えない
もっと話したかった もっとここにいたかった
もっと続くはずだった もっともっともっと
ポケットの携帯電話 すっかり鳴らなくなった
お喋りしていたかった ずっとずっとずっと
真夏の花火さ 夜の帳を焦がす
人混みに紛れて ダイナマイトを仕掛けた
きみが視えなくなった 身勝手なお願いでした
会わない約束をした でもきっときっといつか
秋葉原の灯りは曇り空映し出す
人いきれかきわけ ダイヤモンドの星空
きみが改札に消えた 別れた後で気がついた
前より好きになってた もっともっともっと
もっと時間があれば もっと一分間でも長く
もっと一緒にいれば もっともっともっと
もっともっともっと
もっともっと
やってくれるぜきみは 大胆すぎるんじゃない
きっと買うぜひんしゅくを おんなたちの反感を
おーヨーコ おーヨーコ 真夏の空の太陽
おーヨーコ おーヨーコ 光り輝く娘
勝手気まますぎるんだ 誰彼なくなれなれしい
きっと火傷するかンな おとこを甘くみてっと
おーヨーコ おーヨーコ パラシュートは開いてるぜ
おーヨーコ おーヨーコ 香りあふれる娘
きみを独り占めしたい
相手にとって 不足はないぜ
信じてないな ヨーコ
クールになんて かまえてないで
行くしかないぜ もう
躊躇わないもんね
やってくれる目くばせは 自覚なさすぎるんじゃない?
きっと誘ってんだな ハン思わせぶりじゃないか
おーヨーコ おーヨーコ おとこ狂わす毒を持った
おーヨーコ おーヨーコ 油断ならない娘
おーヨーコ おーヨーコ それでもいいさ ぜんぜん
おーヨーコ おーヨーコ 甘い蜜にありつけば
たどり着いたらいいな ヨーコ
きみを独り占めしたい
なにやってんだ まったくおれは どうしちゃったんだろう
生きるチカラ
ぼくにください
生きるために
もっと
もっと
誰かさんを手伝ってあげること
誰かさんの役にたつこと
わたしあなたの
チカラになれるよ
そんな気がする
目の前には弱気になっているひと
ひとりぼっち離れてるひと
わたしあなたのクスリでいいよ
元気をあげる
だからいいよ
遠慮しなくったって
いってあげる
名前呼んでくれたら
もしも
もしも
つらいことがあったなら
迷惑じゃないから
話しかけておいでよ
なにかしらしてあげたいと思うこと
手を貸さずにいられないこと
わたしあなたに優しくなれるよ
そんな気がする
目の前には弱気になっているひと
じぶんじしん見失っているひと
わたしあなたのクスリみたいでしょ
ラクになったかな
たぶんいいよ
だいじょうぶ得意よ
助けてあげる
電話かけてくれたら
もしも
もしも
よろこんでくれるなら
気づいてくれるかな
わたしもうれしいよ
だからいいよ
なんだっていってみて
応えられる
みつけてくれるから
ちょっとだけ
好きになってもいいよ
クスリじゃ不満かな
毒になってもいいよ
旅立とうぜBaby 迷ってんだねMaybe
思いつくまんま 旅に出よう 今すぐに
Hallo, how are you きみが大好きだ
ゆうべもきみのことを考えた
今朝がた見た夢 ぜんぶ話そうか
Singer song new thing 大切なことは
望むがままに生きてゆくことさ
生身のきみを抱きしめていたい
仕事が済んだら待っているから
旅立とうぜBaby 知られないさMaybe
行くあてないまんま 旅に出よう 未知の国
Can you hear the music? いつも感じてた
近づくきみに胸は高まった
幸せすぎて 少し怖かった
だけど毎日このまま 過ぎてゆくのなら
旅しようぜBaby
Hallo, how are you きみが大好きだ
ゆうべもきみのことを思ってた
名前を呼んだ 確かめていたい
ホントの自由が待っているから
旅立とうぜBaby 愛育てるにはMaybe
時間があんまりないぜ 旅に出よう
今すぐ
出かけようぜBaby 迷ってんだねMaybe
気持ちの向くまんま 旅に出よう 陸奥に
暖ったかいな 何度も
スマイル 交わしあえば
毎日 なんかステキ
会ってたいな いつでも
スタイル 気にしなくちゃ
戸をたたく まるい声
こころの芯を溶かす
まるで魔法みたいだ
ありのままを伝える
明日またあえるかな?
なんて なんて不思議な
ドライブ 走りだせば
成り行きに任せるだけ
なんで なんで どうして
答えるんだ 間延びして
信じらんない くらい
こころの花を咲かす
飾りのないことばは
あたりまえを届ける
明日またあえる?
このまま続いてくと いいね
好き ここにおいで
好き そばにおいで
好き 腕が触れて
好き 胸が揺れて
暖ったかいな いつもの
スマイル 交わしあえば
毎日 すごくステキ
こころの芯を溶かす
なにげないその仕草
ありのままを伝える
明日またあえる
明日も逢いたい
このまま続いてくと いいね
夢 すべては夢
夢 すべては夢
夢 すべては夢
夢 すべては夢
こころに記したしあわせを
とりだしては眺めている
覚えていますかほほえみを
柔らかだった頬の色
覚えてる? 覚えてる
きみのこと 忘れないよ
いつまでも
今夜もいたずらなささやきを
思いだしては笑っていた
覚えてしまったんだ Siamese Dream
教えてくれたたからもの
覚えてる? 覚えてる
ぼくはずっと 忘れないよ
悲しみの在処 繋がっているのか
ぼくの心臓に(心臓に)
Yes 心臓に(心臓に)
この痛みの住処 永遠に続くのか
きみの心臓に(心臓に)
とても慎重に(慎重に)
Oh, 心臓に
ふたりが好きだったひとときの
欠片を拾い集めてる
覚えていますかまぼろしを
あざやか過ぎた空の色
きみのこと 忘れない
ぼくのこと 忘れないで
いつまでも
忘れないで
生きているなんて 息してるだけで
幸せじゃないな きみはそういった
生きていることで いいことがあると
信じてるなんて 信じられない、と
勝手にすりゃいい 束縛するつもりはない
黙ってたって いずれ去ってゆくのなら
好きなようにすればいいよ
かまわないさ
自分のこと信じてれば
好きなように生きていける
ここからは思いおもいに歩いてゆこう
つまらないことは どこにでもあって
喜びはないな きみはそういった
つまらないことで 笑ってるだけで
特別じゃないよ 転がってます、と
勝手にすりゃいい でもきみのこと嫌いじゃない
黙ってないで なにも変わらないのなら
好きなようにすればいいよ
かまわないさ
自分のこと嫌わないで
好きになってくれりゃいいな
ここからは思いおもいに歩いてゆこう
きみのことが好きで
時間は滑りすぎて
ここにたどり着いた
運命の曲がり角
人生のピークはいっぺんじゃないぜ
わからないさ なにが起こるか待っているのか
好きなように すばらしいじゃないか
真の自由だ
軽く手を振って別れようか
これからは思いおもいに歩いてゆこう
さあ、行くんだ
【ここからはボーナストラック】
歌詞は1曲めと同一
歌詞は4曲めと同一
3曲の没テイクを編集で短縮し、つなぎ合せたものだ。
「もっともっともっと」はベタなロッカバラードだった。「生きるチカラ」はもともと独立した曲だった。「あなたのクスリ」も最初は素朴なアレンジだった。私は楽曲の成立過程をリスナーに知ってほしかったのだ。
①
きみが視えなくなった 身勝手なお願いでした
会わない約束をした でもきっときっといつか
秋葉原の灯りは曇り空映し出す
人いきれかきわけ ダイヤモンドの星空
②
生きるチカラ
ぼくにください
生きるために
もっと
もっと
③
誰かさんを手伝ってあげること
誰かさんの役にたつこと
わたしあなたの
チカラになれるよ
そんな気がする
目の前には弱気になっているひと
ひとりぼっち離れてるひと
わたしあなたのクスリでいいよ
元気をあげる
たぶんいいよ
だいじょうぶ得意よ
助けてあげる
電話かけてくれたら
もしも
もしも
よろこんでくれるなら
気づいてくれるかな
わたしもうれしいよ
だからいいよ
なんだっていってみて
応えられる
みつけてくれるから
ちょっとだけ
好きになってもいいよ
クスリじゃ不満かな
毒になってもいいよ
歌詞は8曲めと同一
かように、この『変身』はひとつのコンセプトに貫かれた作品集だ。全体を通して聞くと、ひと組の男女のラブストーリーが容易に思い描けるだろう。ともあれ、『変身』についての過多な説明は避けたい。聞いた人それぞれが、私の提示した2001年ごろの東京を舞台にした恋愛物語に、自分の経験を照らし合わせてもらえばいいな(2024年版の記事より転載)。
『変身』は、聞くたびに新たな発見があるアルバムだ。前年に私は、〈アコースティックギター一本と歌だけで楽曲を成立させる〉という課題をみずからに課したけれども(その時代の録音は『Cassette Gadget 4q』に収録されている)、この『変身』も基本的にはアコギ一本の弾き語りで成立しうる楽曲が大半である。ゆえにアレンジも極力簡素にするを心がけた。が、今の耳で聞くと、そのストイックさが窮屈にも感じられる。もう少し遊びの要素があってもよかったかもと思うのだ。アルバムの後半に収めた「忘れないで」など、つくった当初はやりすぎかなと思っていたが、今となっては編曲の工夫に面白みを感じる。もう二度と戻らない、未練と諦念が入れ混じった精神状態を、歌詞以上に音響が示しているように聞こえるのだ。何度もいうが私の声質は人を和ませない。自分でも「硬いなあ」と感じることしばしばだ。裸の私をさらけ出すのもほどほどにするべきだ。そんな複雑な感情を抱いてしまう『変身』はやっかいな作品集なのである。
ともあれ、残された時間はわずかだった。つくったとき、私はすでに39歳、40歳を目前にしていた。もう一作つくってみてダメだったら諦めよう、そんな思いが日に日につのる2001年の冬、生活を含めて私は窮まっていた。旅立とうにも旅立てる余力がもはやなかった。『変身』で恋愛というテーマを自分なりに修めた私は、残る気力を振り絞って『21世紀のプロテストソング』の制作に着手した。
鰯 (Sardine) 2025年11月14日
