埼玉県所沢市では16年過ごした。最初に暮らした寿町のアパートで、1996年から2002年のあいだ、音楽制作に没頭した。この時代に作った曲の歌詞を、録音した順に、二篇に分けて掲載する。
おおまかに時系列を示す。
1996年『離してはいけない』、「高原」
1997年「鬼さんこちら」〜「行かないで」
1998年「マルガリータ」〜「燃えてHighになるまで」
1999年「好きになってください」〜「藍を染めあげ」
2000年〜2002年は『所沢時代②』に掲載
所沢航空公園 1987年
【プレイリスト】
1. 高原
Instrumental
2. 鬼さんこちら
まっすぐに手を伸ばしたら 龍のしっぽを掴んだ
まっすぐに光が射しこんだら 今がそのときだ 歩きだせ
まっさおな空を見あげたら たくさん空気を吸いこんで
まっさおな空のてっぺんから 降りそそぐ声に答えて
しっかり地面 踏みしめて そのまま歩いて行きなさい
きみが歩いた その後には 色とりどりの花が咲くだろう
暖かな南の国へ 陽気な風を呼びこんで
暖かな陽ざしを浴びて 太陽を丸ごと呑みこんで
広がる海という海を 悠々と泳いで行きなさい
きみが渡った そのあとには 七色 虹の橋がかかるだろう
まっすぐに歩いてゆけばいい 希望を胸に抱きしめて
まっすぐに背中を伸ばして 唇に歌を携えて
鬼さんこちら 手のなるほうへ
鬼さんこちら ほらどっちだ こっちだ
鬼さんこちら 手のなるほうへ
鬼さんこちら ほらどっちだ こっちだ
3. 三月の雨
春雷の悲鳴を どっか遠くに聞いた そんじょそこらであった お別れ流れてった
三月の雨なら 濡れてゆくがいい どうかこのままずっと 降り続けてもっと
行っちまったそっと去っていった 消えちまった雨にけぶる通り
壊れちゃった欠けら置いていった 砕けちゃったぼくらはこの通り
三月の雨そうか 無くして気づいた かけがえのないものを手放したことに
きみはどこへ行ってしまったの? ぼくを捨てて ぜんぶ脱ぎ捨てて
三叉路にたたずんで 行き交う人みてた
ずぶ濡れのぼくなんて きっと彼らの視野には入ってないさ
三月の雨どうか 洗い流すがいい どしゃ降りのなかだって笑えそうな気がするよ
そうさきみは行ってしまったの ぼくを捨てて去ってしまったの
いつかきみと出会ったらきっと 偶然だねと笑っていえるだろう
4. スーパーマーケット
あきらめ悪い男がまたひとり グズグズしてるよ 一見はお断り
どこに行けば手に入る どうしても見つかんない
どこでそれを手に入れる 探しても見つからない
広告を出してない コンビニには売ってない
入手する方法は 教えられない 秘密
疎外されてる気分はどうだい 置いてけぼりの気分はどうだい
いくらお金を積んでもダメだ お客さん、売らないぜ
売り出しが遅すぎた タイミングが悪かった
言い訳を貼りつけた 粗悪品が山積みだ
作るだけ作ったら あとは知らぬ存ぜぬ
掴まされたらアウト 泣きを見るド素人
それじゃ一山いくらでどうだい 売りに出される気持ちはどうだい
それで価格を下げたらどうだい 要らないよ、買うもんか
あきらめ悪い男が待ってるぜ そろそろ入れるよ 一名様ご案内
ここで試してみるのはどうだい 一か八かに賭けたらどうだい
いくら吹っかけようとかまわない 無法地帯に、ようこそ
ここで試してみるのはどうだい 一か八かに賭けたらどうだい
いくら吹っかけようとかまわない お買い上げ、ありがとう
5. ソングライター
いつまで この騒ぎは続くんだろう
今世紀中はまだ 終わらないだろう
止まらないGrooveを 限りない低周波を
目くるめく快感を ぜんぶきみにあげよう
どうしたら こんなのが書けるんだろう?
どうせこんなのが きみは好きなんだろう?
ありふれた気持ちとか さりげないしぐさとか
ありきたりのことばで ぜんぶきみに伝えよう
ソングライター 受難の時は
あたま抱えてたって ダメさ
ソングライター 分析はやめて
身体つかって 感じるんだよ もっともっと
Oh Yeah
あけすけさ それだけが真実に近づける
この騒ぎは終わらない 加速つきで届けよう
冷めやらぬ興奮を とどめよう瞬間を
たたえよう現状を それでみんな幸せ
ぜんぶ投げだそう
6. 立ってるだけ Explicit
立ってるだけ 立ってるだけ
そこにいるヤツを見な 途方に暮れてる
連中に「いらない」と見切りつけられた
脱落者 世の中は必要としない
連中は「いらない」と突っ返してきたぜ
立ってるだけ そう ただ 息してるだけ
立ってるだけ なら 死ね
生きてゆく価値のない ヤツを見つけたぜ
かっぱらいやポン引きが まだ少しまとも
クビきられ泣きを見て 茫然自失か
誰か助けてくれるといいのに と待ってるだけ
待ってるだけ そう 時間 食いつぶして
待ってるだけ なら 死ね
キミの骨なら おいらが貰った
すりつぶして粉にして海に撒いてやろう
いつまでも甘い夢 みてりゃ世話ない
ケツを巻いて逃げてゆく 情けないったらありゃしない
ああだこうだ好き放題いってるヤツらが頼るのは結局たしかな数字の結果
連中は「おまえなんかいらない」と見切りをつけた
立ってるだけ ただ そこに立ってるだけさ
立ってるだけ 死ね
立ってるだけ ただ 立っているだけなら
いっぺんだけ 死ね
死ね...
立ってるだけ なら 死ね
7. Cut 'N' Paste
熱くなるなBaby クールに決めちゃえばいいのさ
割りきりは肝心 倫理上問題はないのさ
つまるところは単なる手段 とくべつな技術? いらない
知識は邪魔なだけ 簡単で確実ですばやく安全
みんなカット・アンド・ペースト
切って切って切って 切り刻む
みんなカット・アンド・ペースト
貼って貼って貼って 貼りつける
編集能力は必要よ
片っ端から 放りこんじゃえばいいの
サンプル・アンド・ホールド
形整えて ひっつける はめこんでいく
仕上げはミニマルなフレーズ
サブリミナルなシーケンス
ガキどもの脳みそを洗えばいいのだ そいつは新鮮
みんなカット・アンド・ペースト
カッコいいとこ おいしいとこ イケるとこ
みんなカット・アンド・ペースト
サイズ揃えて 加工しやすくしといてね
編集能力がキミにはどうも欠けていますね
ヒップホップをおさらいしたらどう?
この世界を生きぬいていくためにはSpeedが必要
ちょっとしたもの全てを手に入れるんなら そのRoopの中に入らなければ欲しいモノがカンタンに手に入れられるんならそれはいいことだ
テクノロジーを否定するのなら電気のない国に行くがいい
音楽だって映像だって五感を刺激するための装置だ
資本社会を否定するのならお金のない国に行くがいいさ
これはカット・アンド・ペースト
切って切って切って 切り刻む
みんなカット・アンド・ペースト
貼って貼って貼って 貼りつける
編集能力がキミには決定的に欠落していますね
ヒップホップ以前のヒトだね
カット・アンド・ペースト
カット・アンド・ペースト
Oh, Yeah
カット・アンド・ペースト
8. 行かないで
Lady Lady 窓から出ておいで
月あかりの下 ふたりきりの
ダンスを踊ろう
Lady Lady 静かに出ておいで
誰も知らない 気づかれない
月夜のダンスを
行かないで もう少しそばにいて
このまま 時間が とまったら
いいのに
Lady Lady 今すぐ出ておいで
海岸通り 抱きかかえて
横断してみよう
Lady Lady つかの間の幸せが
ずっとずっと ずっと続くようにと
想い秘めたまま
行かないで もう少しそばにいて
このまま 時間が とまったら
いいのに
浮かぶ島 鳥の影 雲ちぎれ その瞳に映しだされた すべて
I love you
Lady Lady 教えて この愛が
どこへ向かっていくのかを
承知してるなら
行かないで
もう少しそばにいて
このまま 時間が とまったら
いいのに
9. マルガリータ
マルガリータ マルガリータ ぼくのこころ盗んでゆく とても素早く
ざわめく街 彷徨ってゆく 人の流れ 逆らいながら あてどもなく
終わりのない旅の始まり 二度とこの手に戻らぬ予感ふり払いながら
消えようのない情熱を抱き ぼくは今日も探している その姿を
マルガリータ
時の流れ 絡めとられ 人は哀れ 食べて飲んで 眠りに就く
叶わぬ夢 忘れるため 笑いころげ 歌い踊り くだを巻いて
終わりのない旅は続く 紡ぐように 耕すように 描きながら
交わりのない 光と影 ぼくはいつも見つめていた その輝き
マルガリータ
そのままでいい 眺めていたい 汚したくない おろしたてのスニーカー
このままじゃ歩けない ならば ぬかるんだ道 泥水のなか浸してみよう
どうしようもない 思いの丈 なんと哀れ
終わりのない旅の果てに いつかきっと会えるときが来ると信じて
とり憑かれてる 宿命ならば ぼくは描く きみを描く そのときまで
マルガリータ!
10. 信頼2
好きなようにすればいい おれは躊躇わない
この身体はぜんぶ ぜんぶお前のもんだ
取れるだけ取るがいい 絞るだけ絞るがいい
さあ
もうどうなったっていい おれは傷つかない
熱いやつが欲しいか 激しいのがいいか
荒っぽくてもいいか なんとまあ物好きな
なあ 何をお望みか
信じてるからな 信じてるからな 信じてるからな
常套手段 口車 乗っかっちゃって後悔するもいい
どこか知らない場所へ おれを連れていって
見たことない光景 見せておくれといった
そうかそういうことか やっとでおれわかった
ああ カモン来てさ
信じてるからな 信じてるからな 信じてるからな
あんな仕打ちを受けといて 痛かったって泣いてるだけかい
諦めかけていた 今さら これくらい怖かない
裏切りかけていた お前に この声が届くか
信じてるって、何? 信じてるって、さぁ
信じてるって、何? ホントのことをいおうぜ
もっとも儲かンないと
信じてるって絶対オーライ
信じてるって絶対オーライ
信じてるってそうかいオッケー
本気さ、きっと だったら握手しようぜ
信じてなって信じてなって もう一回どうだい?
信じてなって信じてなって もう一回どうだい?
信じてるからな
今度こそは とびきりの眺め見ようぜ
Hey!
11. 燃えてHighになるまで
One
正直なところ あのオーナー 手強すぎるよ やめとけ
現実ってのは あばずれ 蓮っ葉なうえ きまぐれ
一途に賭けた そうさ甘ったれ
ズブズブぬかるんで 深くのめりこんで
Ohh
毎日 毎日 毎日 稼いでやれ
なんだか なんだか 負ける気がしない
危なっかしい そこの坊や 引き際ってのが わかるか
気の毒に 踏みにじられ 弄ばれて 捨てられ
傾きかけた運をありったけ
注ぎこんだ紙ッきれ 食いつぶされようと
Ohh
毎日 毎日 毎日 巻きあげられ
手の内 さっぱり すっかり売りとばして
Ah, Gambler 'cause I'm Rambler
流れ呼び戻せ
いつか いつしか 燃えてHighになるまで
性懲りもなく またもや
戻ってきたか あの坊や
勝利はないと 知ってる だが、
負け方だって 学んでる
くすぶりかけた そんな情熱さえ
ふつふつ煮えたぎって のぼせ上ってるぜ
Ohh
毎日 毎日 毎日 賭けまくっても
損なの あーそうなの そんなの もうどうだっていい
Ah, Teaser 'cause You're Dealer おまえ ふり向かす
なんとか なんとか 食らいついて離れない
Ah, Gambler but I'm not Loser おまえ 振りこます
いつか いつしか 燃えてHighになるまで
燃えてHighになるまで
12. 好きになってください
ああ認めたくなかったけれど いつも冷たくふるまってた
他人の意見はどこ吹く風と こころに鍵をかけていたんだ
あなたが扉 開いてくれた 温かかった
好きになってください こんなぼくをよかったら
好きになってください このへんが熱いんだ
好きになってしまった
愛されたいと願ってたけど 愛されること恐れてた
誰もぼくには近づけまいと ことばのナイフ振りかざした
あなたがくれた微笑み抱いた 優しくなった
好きになってください 気にとめてくれるなら
好きになってください こころからこころから
あなたに届けたいんだ、マイラヴ
部屋に飾った一輪の花 あなたのような
好きになってください こんどぼくに出会ったら
好きになってください この変化わかるなら
好きになってよかった
ラララ......ラララ
好きになってください こころからこころから
あなたに伝えたいんだ マイラヴ
13. シンパシー
公衆電話に置き去りにされた 新聞があれば事足りた心
真実があれば知ることができた 何気なくつけたラジオから流れた流行歌の間に
Sympathy 分かってくれるな たやすく共感なんぞしてくれるな
Sympathy 知ったことぬかすな 冗談じゃないぜ
静かに、静かにどうか 揺り動かさないで 彼は眠っているだけ
映画を観るんなら日比谷まで行こう 封切の朝に真ん中の席に身体ごと埋め
Sympathy 分かってたまるか 今さら同情なんぞされてたまるか
Sympathy 悔やんでいるのか しょうがないじゃないか
静かに、今まさに幕が下りてくところ みんな帰ってゆくだろう?
Sympathy 分かってくれるか 確かな息遣いがそこにあった
Sympathy だが生きてるうちに 誉められたかったな
ラストシーン;
ありったけの
花束を贈ろう
鳴りやまぬアプローズ
14. 裸足で踊って
街はずれ 群れはぐれ ざわめく人の波に流れ
誰ひとり 語ることもなく 影法師相手に遊んでたっけ
ちっちゃいのが せいいっぱい 裸足で踊って
アンドゥトロワ 裸足で踊れば
おぼろに見えた 空の色さえ 変わるはずだよ
つま先の感じを 思いだすなら
街はいま、揺れはじめた 道行く人よ、立ちどまれ
また一人 知らん顔をした 胸の裡ひそかに思い隠して
あー、何度も ちっちゃいの 裸足で踊って
アンドゥトロワ 裸足で踊れば
はかなく消えた 夢の糸さえ 紡ぎだすよな
指先の暗示を描きだすから
もう一回、裸足で踊って
アンドゥトロワ 裸足で踊れば
蒼く光った アスファルトから 滑りだす、ほら
躓いた あの日を 解き放したら
つま先の感じが よみがえるから
15. 赤いホンダ
軽いピッチで行こうぜ このままずっと
振りきれそうなテンポで蹴つまづこうと
いけるかも知れないぜ 今夜こそはと勢いづいて
赤いホンダは追いかけてった
走るはしる まるで飛んでくようだ
早くはやく おれを連れていけ
Sha La La… HONDA HONDA
Sha La La… Love You
取り巻きどもはいうのさ You're gonna lose that girl
愛想つかされそうだぜ 笑ってやがる
真夜中のランプでは 居てもたってもいられない
赤いホンダは駆けだしてった
走るはしる 信じられないくらい
焦るあせる 気持ちふき飛ばして
Sha La La… HONDA HONDA
Sha La La… Love You
あいつはただの道楽息子 勝ってばかりの贅沢野郎
赤いホンダよ追いつかないと
走るはしる 必ず捕まえてやる
早くはやく あの娘をそうさ とり戻すため
どんな富も権力も てんで敵わない
おれの夢と情熱 誰も敵わない
Sha La La… HONDA HONDA
Sha La La… Love You
Sha La La… HONDA HONDA
Sha La La… Yeah!!
16. 藍を染めあげ
指先かわす間もなく 一緒に一度だけの空白
怖くて これ以上 踏みだせない
密かに放った弓矢 千切れた雲の間を照らす
離れて膨らむ 月明りよ
戸惑い躊躇うふたつの 影が重なる瞬間
二度とは 戻らないのなら
空と海の境に溶けこんだ 藍を染めあげ
彩り増してゆく 熱い 吐息が 触れた
妖しく光る漁火 ときに激しく輝き
波間に漂い 流れていった
震える心とこころ ひとつに響く律動
ひとたび呼び寄せられたら
空と海の境に溶けこんだ 藍を染めあげ
彩り増してゆく 熱い 吐息が 揺れた
空と海の境に溶けこんだ 藍を染めあげ
彩り鮮やかな 朝に 包まれていった
抱き寄せかえす純白 かすかに漏らすことばは
「怖れを知らない人となって」
無断転載禁止
作詞/作曲 岩下啓亮 Sardine
【収録アルバム】
・収録曲No. 1,2,5,6,7,8,10,11
・収録曲No. 3,4,9,12,13,14,16
・収録曲No. 7,15