鰯の独白

鰯は、鮪よりも栄養価が高いのです、たぶん。

本当に君は困った人だ

 

今朝また君からのメッセージが届いた。

f:id:kp4323w3255b5t267:20160309104301j:image

ひと月前に、ぼくらは並木坂の、こ洒落たワインバーで再会した。

気がついていたか? ぼくが卓上の旨そうなアヒージョに手をつけなかったことを。

あれは意思表示だったのだ、ぼくは話にのれないぞ、という。

それは察知していたんじゃないのか。

音楽活動を再開できない理由も包み隠さず話したじゃないか。

音楽が嫌いなもんか。ルー・リード言うところの“Better Than Sex”だって分かってるさ。

イワシ タケ イスケ@cohen_kanrinin

だけどバンドはしないよ。カッコつけんな素直になれよと言われても、そこは譲れない。なぜならぼくは、まだ責任を果たしてないから、楽しむ余裕というより資格がない。最高の快楽だと知っているからこそ、演奏するのを断(た)ってるんだ。
と、シラフのぼくは答えたんだけど、おーい酔いは醒めたか。

posted at 07:41:15

あれから君は、何度かぼくに電話をかけてきた。

音楽活動を再開した個人的な理由も聞くことができた。

気持ちは分かった、だから曲を提供することを承諾した。

前歯が欠け、息が洩れ、すっかり声の出せなくなったぼくに、

できることと言えばそれくらいしかないもの。

録音機材はぜんぶ売っ払うか捨ててしまった。

手元にあるのはイーストマンのギター一挺だ。

君と君のバンドが演奏し、昔馴染のヴォーカリストが歌うと想定して、

夢に現れた歌を基にBmのブルースを作ったんだ。 

kp4323w3255b5t267.hatenablog.com

少しばかりデヴィット・ボウイが反映しすぎたきらいはあったが、

まあ悪かないと思ったんで、君に一分間のメッセージで送った。

適当に作ったんじゃないぜ。

もう一曲できていたけど、それはU2に似すぎていると判断したから没にした。

曲を作るというのは、そういうことだ。

曲を送るというのは、そういうことだ。

生半可な気持ちじゃ、できないことだ。

 

さて、今朝がた君からもらったメッセージに、ぼくはひどく気分を害した。

むかしぼくが書いた曲のコード進行を教えてくれだと?

怒るかもしれないが、とわざわざ前置きまでして。

理解っているじゃないか、ぼくの狷介な性格を。

ぼくはこう返信した、君の口調を真似してね。

<賢明な判断です。パッとせん・ピンとこん昨今の私より、旧作を使用した方がまだマシです。どうぞご随意に。コード進行等は好きに改変してもらって結構。>

直後の返答は、こうだ。

<そうじゃないって、今回もらったのは メンバーが今、仕上げにとりかかってる。昔の曲は、俺が個人的に歌いたいんだけど、俺、音とれないからお願いしてるの>

そして次にこう来た。

<本当に君は困った人だ>

その言葉、そのまま返すよ。

<ただ、素直に俺のビートに乗って歌ってくれればいいのに>

なるほど君はロックしている。

昔からリズムの核を捉えるにかけては天下一品のドラマーだった。

君より巧いドラマーに随分めぐり合ったけど、君ほど煽るビートを叩くドラマーは稀だった。

だが最早ぼくは、苛烈なビートには乗れない。

ニール・ヤングの歌にあっただろう?

「君は風上に向かって放尿している」

Except for the Farmer's Market
And I still can hear him say:
You're all just pissin' in the wind
You don't know it but you are
And there ain't nothin' like a friend
Who can tell you you're just pissin' in the wind

「本当に君は困った人だ」

ぼくが何をしたと言うのだ。
君が勝手に困っているだけじゃないか。
まあいいや。
「本当に君は困った人だ」は、"Ambulance Blues"に匹敵する名文句だ。
遠慮なくタイトルに使わせてもらうぜ兄弟。
 
  
 
【追記】

今日はさ、おまけ①のScanty&    の解説をするね。

1曲目は「どうすりゃいいんだ」って曲で、FLASH RECORDっていうレコード会社が、これ熊本の会社なんだけどさ、おはるさん(※のちチナキャッツ)と角川映画の主題歌になった松村とおるさんに続くスター?を輩出するためのコンテストが1979年の12月24日に市民会館の小ホールであって、最有力候補は、小山卓治だったんだけど、何か知らんけど俺達がグランプリになって、高3の冬に水前寺か国府あたりのスタジオ(※SHEEP)で録音した曲。

受験前で、この曲を録音して実質的にスキャンティーは解散した。まあ、この頃には、メンバー間の音楽性の違いが明らかになってきたことが一番大きかったのかも知れんけど。今、考えると高3でそこまでシビアだったんだなぁと思う。

続いて、高3の夏にエルモーションの熊本大会でグランプリを獲って、お祝いに  楽器のKさんとYさんが、ペパーランドのライブをタダでやらしてくれて、入場料は俺達のお小遣いにくれた時の録音がはいってる。
ありがたい話だよね、九州大会行くの金かかるからね。
でも、今聴き返すと「薔薇族」(ダムド「ニューローズ」の日本語カヴァー)やってるから、九州大会の後だね このライブ。

続いて、その九州大会、今は無き福岡スポーツセンターでのエルモーション九州大会のライブ。
ウイングスとエルトン・ジョンのコピーを演ってて、まだ可愛い。
でも、この日から俺達は変わった。

何でかと言うと、この日に俺達は、モッズ、ロッカーズ、モダンドールズ、人間クラブ(※のちのルースターズ)何かの いわゆる めんたいロック群に殺られてしまった。
次の日から、髪をツンツンに立ててTシャツを切り裂いて安全ピンを付けて上通りを歩いた。
熊本がロンドンになった日だね。

続いて2003年、「ふわふわ」って曲で、1曲だけスキャンティーが復活するんだけど、これは   が全部一人で演ってる自宅録音。やっぱ  天才!

次は「離してはいけない」っていう  のソロアルバムから「抱擁」。
これも全部一人で演ってる。

最後は、これも  のソロで「あなたの影になりたい」。

もう、何も言うことは無いよ。
80年のエルモーションは、  とかんちゃん抜きで出たんだけど、  は会場から走って来てステージに上がって歌いだした。  は驚いてギターの弦で指切って、ギターが血だらけになった。
あの日、4℃にもIQ80にも負けたんだろうけど。
あの日 一回、俺は終わった。

  がいないと、スキャンティーでは無い。

 

( 2月19日・君のFacebook記事より、一部名前を省略して引用。()はぼくの注釈。
高校生だった頃の君がバンドを率いていたとき、どこに目を配っていたかがよく分かる。ぼくはコンテストの成り立ちとか出資者や協力者が誰だとかに、まるで頓着していなかった。ただ、わけも分からず闇雲に喚いていただけだった。)