鰯の独白

鰯は、鮪よりも栄養価が高いのです、たぶん。

身も蓋もなく

 

今回のエントリーは我ながらとりとめないと思うよ(と予防線を張っておく)。

f:id:kp4323w3255b5t267:20170612174233j:image

「ちょいオヤジ」の編集者が新雑誌を創刊し、その紹介記事がひどいと話題になっている。ちょい長いが、一部をまるっと引用してみよう。

🔗 「ちょいワルジジ」になるには美術館へ行き、牛肉の部位知れ | ニコニコニュース

 女性を誘うなら、自分の趣味や知識を活かせる場所を選ぶのが賢い「ちょいワルジジ」の策です。

 創刊号では「きっかけは美術館」という企画を予定しています。「美術館なんて出会いの場所になり得ない」と思うかもしれませんが、実は1人で美術館に訪れている女性は多い。しかも、美術館なら一人1500円程度だからコストもかからない。

 まずは行きたい美術館の、そのときに公開されている作品や画家に関する蘊蓄を頭に叩き込んでおくこと。

 熱心に鑑賞している女性がいたら、さりげなく「この画家は長い不遇時代があったんですよ」などと、ガイドのように次々と知識を披露する。そんな「アートジジ」になりきれば、自然と会話が生まれます。美術館には“おじさん”好きな知的女子や不思議ちゃん系女子が訪れていることが多いので、特に狙い目です。

 会話が始まりさえすれば、絵を鑑賞し終わった後、自然な流れで「ここの近くに良さそうなお店があったんだけど、一緒にランチでもどう?」と誘うこともできる。もちろん周辺の“ツウ好み”の飲食店を押さえておくことは必須です。

カンベンしてくれよ~と頭を抱えたくなる最低の記事だ。私的には、美術館でのナンパ術を得意げに指南するちょいワル爺の断末魔が、安倍政権を擁護するリフレ派経済評論家や政治アナリストの口調とみごとに連動しているようで失笑を禁じえないが、いずれにせよ、美術館では静かに絵画鑑賞に浸りたいぼくとしては、こういう回春に勤しむばかりの煩悩爺さんの存在は迷惑千万きわまりなく、早いとこ萎んでほしいと切に願う。

 

 

ところで先日、このニュースを観ていて環七さん(仮名)がポツリとこんな感想を漏らした。

www3.nhk.or.jp

「汚染した部屋に3時間待機しろ、出てくるなって命令されたて、作業員がかわいそうじゃなかや。シロウトにでも深刻な健康被害が想像できる。原子力利用は自然の摂理に反しておる」

「や、いいこといいますね。まったくそのとおりです」とぼくは大いに相槌を打った。

「だけど環七さんは前に言ってましたよね? 原発がないと日本経済は立ち行かんと。あの意見、撤回するんですか?」

ぼくの意地悪な質問に、環七さんはなんともいえないばつの悪そうな表情を浮かべた。

「そりゃ原発が稼動せんと、日本株式会社の経営は成り立ってゆかんだろ。それが現実ですばい?」

「でも、それが現実ちゅうならば、日本海側に原発がズラリと並んでおるのは、国家の防衛という観点から見て、はなはだ危険ではなかですか?」

「そりゃそうたい」環七さんは麻生太郎のように口の端を歪めて笑った。

「ばってんミサイルは落ちてこんよ。いくら北朝鮮でも、そぎゃん莫迦なことはせんど。だけん、あんまり挑発するようなメッセージを発信してはいかんね」

安倍総理が、ですか?」

「……日本政府として、な」

ぼくはそこで追及をやめた。ここまで言えば、ぼくの言わんとしていることが伝わっているだろうと踏んだからだ。

 (※環七さんは以下の過去記事に出演してます)

kp4323w3255b5t267.hatenablog.com

 

 

歳をとるごとに、人は身も蓋もなくなる。婉曲な言いかたを避け、「ボス!と言う」ようになる。そのストレートさは、時として粗暴さに変わる。だけど、もうちょいスマートに表出できないものかしら、日本の殿方は。

さて、ここで唐突に、ドゥービー・ブラザーズのギタリストとして有名な、ジェフ・“スカンク”・バクスター氏の「ギター教則ヴィデオ」をご覧いただきたい。辛らつなアメリカンジョークが満載の、愉快な映像である。


Jeff Baxter American Guitar technique 1/9

ジェフ・バクスターの教則ヴィデオはプロのギタリストから教わった。彼いわく、「身も蓋もないし、ちっとも役に立たないけど、言ってることはぜんぶ正しいんだ」。


Jeff Baxter American Guitar technique 2/9

エフェクター(ギターの音色を変化させるアタッチメント)に振り回されるな、使いこなせと説く。エフェクターなしでは弾けないとぬかすギタリストをこき下ろし、機材の高騰には「せっかく稼いだのに何千ドルも支払わなくちゃいけない、頭にくる」と。


Jeff Baxter American Guitar technique 3/9

ところが、スポンサーに気をつかってか当時の流行機器、ギター・シンセサイザーを紹介。

「ぼくはちゃんとテクノロジーを活用してるぞ。ディレクターが、何かやってくれと要求したら、もちろんさと答える。(演奏)OK、ありがとうといって、彼は小切手を切ってくれるのさ。(違う音色で演奏)ほら、これでまた別の小切手だ。シンセを使いこなせれば、新車のローンだって軽く払えるようになるんだぜ」


Jeff Baxter American Guitar technique 4/9

この教則ヴィデオで一番ためになる部分、リズムギターの弾き方。「リズムを弾けりゃ皆きみと一緒にプレイしたがるぞ。B.B.キングにほめられたんだ、きみのリズムは絶妙だよって」。なんだ、それを自慢したかったのか。


Jeff Baxter American Guitar technique 5/9

これも大事なバックビートについて。ジェフ・バクスターは4ピース・バンドにおけるリズムの構造を分かりやすく分析してくれる。「グルーヴを生み出すのはカッコいいんだぜ、きみもやりたくないか?」って言いながら、「完璧なリズム・ギターというものは、いないともの足りなくて、いても分からないというものだ。誰にも気づいちゃもらえないのは残念だけど、反対に最高なのは誰かが気づくと、『凄いな、明日も来てくれよ、二倍払うからさ』ってことになる」、そこかよー。


Jeff Baxter American Guitar technique 6/9

R&Bにおける「ポップコーン」奏法を中心にシンコペーションとグルーヴの極意を伝授。「やらなくてはできないし、やっても分からない」と禅問答みたいだが、いいこと言ってんだよなあ、「いいリズムギタリストの条件は透明なギタリストになることだ」。でも、そのあとやっぱり「二倍稼げるようになるぞ」ってオチになる。


Jeff Baxter American Guitar technique 7/9

アコースティック・ギターにおける音の響きに注目を促す。「3rd(3度)はなくても1と5でたいていのことができる」と、西洋音楽における完全5度の重要さを説明。


Jeff Baxter American Guitar technique 8/9

ピッキングの違いでさまざまな音色をだせるぞと実例を挙げているけど、正直いってジェフ本人が説明に飽きてきているのがもろバレ。真剣に観る価値がある部分は4/9~6/9にかけて。


Jeff Baxter American Guitar technique 9/9

「ぼくはレス・ポールの“Lover”を凄い曲だと思って、三ヶ月かけて練習しまくって弾き方をマスターした。でも、あとで誰かから『あれは三倍速で録音しているんだよ』と教えられて『うそだろ?』と嘆いた。けど、弾き方を覚えたから結果オーライさ。ありがとう、レス」

 

ジェフ・バクスターは居るだけで楽しくなるヤツだろう。あんたの要求はこれだよね?と即座に弾いて雇い主の期待に応える。まさにスカンク。調子いいけど仕事か捗るとの評価はスタジオで働く演奏家には必要不可欠な要素だ。軽薄そうなふるまいとあけすけな物言いは、百戦錬磨のミリオタギタリストに相応しい。

(註:彼は軍事アナリストアメリカ国防総省の軍事顧問を務めている。)

愛称の「スカンク」は「いやつ」って意味だそうだ。ちょいって形容、ぼくはあまり好きではない。けど、何かにつけ『儲かるぞ、評判になるぞ』と身も蓋もないことを言いながらプレイしていく実行力というか逞しさは、ジェフから見習ってもいいかなと思っている。

では最後に、ぼくの大好きなYoutubeの映像を掲げよう。ギターをアンドリュー・ゴールドに任せ、ジェフ自らはコンガを叩いた(リトル・フィートのリチャード・ヘイワードがドラマーだ!)、ホセ・フェリシアーノの紹介するリンダ・ロンシュタットの出世ナンバー「いあなた」。


Linda Ronstadt - You're No Good

これほど充実したTVでのライブ演奏は、そうそうないよね?

 

 

 

ギター・ワークショップ・コンプリート・ワークス

ギター・ワークショップ・コンプリート・ワークス