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鰯の独白

鰯は、鮪よりも栄養価が高いのです、たぶん。

平和から遠く

 
トランプ勝利の報を聞いて、それほど動揺していない自分が不思議である。

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ただ、予感はあった。それは欧米の著名アーティストたちが挙ってトランプを否定していたときに感じたことだ。かれかの女らはトランプの下品さ、偏狭さ、思慮のなさを槍玉にあげていたけれど、そのドナルドに対する嫌悪の情がむき出しになった声明を読むにおよんで、これは相当ヤバいぞと思わざるを得なかった。とくにロバート・デ・ニーロの動画メッセージには快哉をさけぶ向きも多かったけれど、ぼくは首を傾げた。

《これは負けるのではないか……》

たとえばブルース・スプリングスティーン。かれが“River”で描写したアメリカの貧しき人々。生活の困苦に喘ぎつつも、日々を強く生きていこうと歯を食いしばる人々は、ヒラリー・クリントンではなく、ドナルド・トランプに一票を投じたのではないか。そしてボス(スプリングスティーンのことだ)の真摯なメッセージは、かれらの意識に届かなかったのではないか。選挙結果だけで判断するのは早計だけれども、ぼくには数多のロックスターたちが、エスタブリッシュメントとして遇される現在において、庶民の気持ちを代弁する役目を失ってしまったように思えてならなかった。

ぼくはドナルド・トランプをこれっぽっちも支持できないし、かといってヒラリー・クリントンに期待もしなかった。バーニー・サンダースのことは大好きだったけど、それはかれの示したような道筋が日本に援用できないものか、との視点からだったように思う。いずれにせよ選挙権はアメリカ合衆国の国民が有するものであり、ぼくは関与できない。対岸の出来事を眺めながら、ああだこうだと論評する気にはとてもなれない。むろん他人事ではない。米国大統領が変わるということは、否応なく国際社会に影響を与える。とりわけ日本に及ぶそれは、前代未聞ともいえる困難なものだろう。トランプの就任によってTPPが無効化され、在日米軍が縮小されるなどといった楽観論を唱えられるほど、ぼくはおめでたくない。事態はより険しくなるだろう。しかし既に賽は投じられてしまった。いまさらこの結果を覆せやしない。

そもそもぼくには、他国の政治に口出しするほどの権利も・余裕も・資格も・手段もない。あるとすれば自国のみである。自分の住まう国の状況がかくも酷いなか、アメリカよどうした、頼むからまともになれと念じたところで、何も変わりやしない。ぼく(たち)にできることといえばただ一つ、今の・日本の・政治を、選挙によって変えることである。そのためには夢みがちな目を覚まさなくてはいけない。理念のみをいたずらに弄ぶばかりでは、現実的な利得と権益に敗北してしまう。学ばなければならない。トランプを選んだアメリカから、EU脱退を選んだイギリスから。間違うな、真似るのではない。現状認識をしっかり持ちつつも、平和で過ごしやすく、争いのない世界を手に入れるために、足腰を踏ん張り、持ちこたえ、跳ねかえすだけの胆力を備えることだ。絵空事ではない、地に足の着いた話をしよう。まずは自分のやれること、自分のできる範囲でのことをしっかりと務めておこう。今ぼくが言えることは、その程度である。気の利いた提言なんかできない。ただ、平和から遠くなる世界を、なんとかして食い止めたい。そのためにはどうすればいいかを、考える契機となった今回の大統領選であった。

 

 

【参照】

 

kp4323w3255b5t267.hatenablog.com

 

【追記】

デ・ニーロのときと同じことをメリル・ストリープのスピーチにも感じた。その主張と勇気には1ミリの疑いも抱いてないけれども。(1月10日)

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