休日の朝早く、まだ惰眠を貪りたいときに、
階下からぼくを呼ぶ声がする。
リョースケさん、リョースケさんと、ぼくの名前らしきを。
ぼくはリョースケじゃないんだけどなあ。
そういうとこが雑なんだよな。
もっともぼくも人のことは言えない。
言い損ないはしょっちゅうだもの。
取引先をアズマさんと呼んだことがあるんだ、
しかも二度も。
三度めに間違えそうになったときは、さすがに怒ったね、
ヒガシです!って声震わせて。
今になってようやく東さんの気持ちがわかる。
呼び間違えは不愉快なものだ。
だから頼むよぼくのこと、
リョースケさんと呼ばないでくれ。
それはぼくの名前ではない。
それはぼくではない。