鰯の独白

鰯は、鮪よりも栄養価が高いのです、たぶん。

羞恥心を捨てろ。シングル『あなたのクスリ』

久しぶりに聴きました。ちょっとこそばゆく感じるけれど。でも、削ぎ落とされたアレンジとシンプルなメロディ、そして他人を思いやる繊細な歌詞が今の世の中に通じるものがあるのか​​なと思い、四半世紀前に作った曲をシングルとして出すことにしました(TuneCoreの楽曲紹介文より)。

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ポール・マッカートニーは、リトル・リチャードの「のっぽのサリー」を聞いて、「大事なのは自分の中の羞恥心をすべて消し去ること。あとはやるだけだ」と理解したという。ラブソングをつくる際にも羞恥心の克己(こっき)が大切であると。

それから私も曲を書いたり歌ったりするときは「恥ずかしさ」をいったん棚に置くことにした。自分が、自分でないナニモノになることが「表現すること」の醍醐味であるから。

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TuneCoreからシングルリリース無料キャンペーンの案内がきたので、私は性懲りもなく出そうと決心した。例のごとく、没にした音源の中から、なんとか聴いてもらうに値する楽曲を拾いあつめていたのだが、何曲か候補にあげた中でもっとも自分がおもしろいと感じたのが、「あなたのクスリ」だった。

前の『夏の記憶』シングルと同様、今回も急遽の配信だったので、ジャケット写真は(はてなブログアイキャッチにしている、お気に入りの)バラのドライフラワーの写真を使った。

あなたのクスリ

あなたのクスリ

  • provided courtesy of iTunes

 

【歌詞】

生きるチカラ
ぼくにください
生きるために
もっと
もっと

誰かさんを手伝ってあげること
誰かさんの役にたつこと
わたしあなたの
チカラになれるよ
そんな気がする

目の前には弱気になっているひと
ひとりぼっち離れてるひと
わたしあなたのクスリでいいよ
元気をあげる

だからいいよ
遠慮しなくったって
いってあげる
名前呼んでくれたら
もしも
もしも
つらいことがあったなら
迷惑じゃないから
話しかけておいでよ

なにかしらしてあげたいと思うこと
手を貸さずにいられないこと
わたしあなたに優しくなれるよ
そんな気がする

目の前には弱気になっているひと
じぶんじしん見失っているひと
わたしあなたのクスリみたいでしょ
ラクになったかな

たぶんいいよ
だいじょうぶ得意よ
助けてあげる
電話かけてくれたら
もしも
もしも
よろこんでくれるなら
気づいてくれるかな
わたしもうれしいよ

だからいいよ
なんだっていってみて
応えられる
みつけてくれるから
ちょっとだけ
好きになってもいいよ
クスリじゃ不満かな
毒になってもいいよ

作詞・作曲/岩下啓亮©️

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歌詞を読んでもらえばお分かりのとおり、これはファルセットで歌う導入部だけが男性で、残りは女性が歌うという設定になっている。気弱な男性を励ます女性という体裁で。私は当時ミュージカルに凝っていたから、その影響もあるけれど、まあ、聞きかえすたびに赤面していた。自分の猫撫で声がこっ恥かしいのである。だから、配信プロジェクトを開始した際も、「クスリ」は真っ先にリストから外していた。

ところが、単体で聞き直してみると(錯覚かもしれないけど)、今風に聞こえた。スッカスカのアレンジにも最近の英米の女性が歌うポップスと共通する要素を見出した。出すならコレかな、いや、コレだろうと思って、リリースすることにした。

さて、いちばん恥ずかしい曲「あなたのクスリ」を発表した今、幻のアルバム『変身』を隠している意味がほぼなくなった。未発表はあと二曲、アレンジが古くさいので恥ずかしい「Oh, No   言葉にならない」と、あまりにも即席な「おーヨーコ」を加えれば完成だ。だったら今年中に配信しちまえと私は短期間で、そこまで決心してしまった。

というわけで、今回「あなたのクスリ」はアルバム『変身』の先行シングルという位置づけになる。来月中には配信できると思う。既出作品がほとんどなので、新味はないかもしれないが、散逸した楽曲はやはり本来の場所に収まったほうがいいから。『変身』がどんな意図で作られたアルバムかは、次のエントリーで詳しく記すつもりだ。お楽しみに。鰯 (sardine) 2024/10/26