9月21日、父が亡くなった。享年86歳。
ぼくと父の関係は決して良好ではなかった。
父の説く常識にぼくは反発し、それは彼が生を終える直前まで続いた。
いずれその確執を省みてみたいと思う。が、今はまだ書けない。
葬儀には遺影が必要だからといわれて、ぼくは応接間の書棚を探した。
するとオヤジのやつ、自分が良さげに収まっている見栄えのする写真ばかりを、二冊のアルバムにまとめているではないか。
いわば「ベスト・オヴ・セイジ(父の名前)」とも呼べる写真集だ。
ぼくは思わずふきだしてしまったよ。
あゝこのナルシストめ、って。
ポーズを決めたがるところ、自分にかんする情報を体系化しつくそうとする習い性は、息子であるぼくにも確実に受け継げられている。
そして数々の写真からうかがえる強烈な自我の放出を、父親としての彼は封印していたのかと、ぼくは遅まきながら気づくのだった。
たぶんこの写真、彼は一番気に入っていたのだろう。B5版に拡大していたくらいだから。
うん、めちゃくちゃカッコいいよ。
登山が好きだった独身時代の、あなたに会って話してみたかったなあ。
親と子としてではなく、対等の一人と一人として。