久しぶりに四行定型詩でも書こう。
Manic Mushroom. 名前は不明。
初っぱなはプレストで駆けだした。
人を出し抜けばいいと思っていた。
早ければ早いほどいいと思ったし、
速ければ速いほど優秀だと思った。
立ちどまるなと言い聞かせていた。
停まったら負けだと錯覚していた。
走ること自体が目標になりかわり、
走ること自体が目的に適っていた。
が、
そのままずっとキープは不可能だ。
息切れの行く末が見えるに従って、
きみは徐々にスピードを緩めだす。
自分のペースでいいじゃないかと。
かつてはアレグロで走りおおせた。
今ではアンダンテもおぼつかない。
レントより遅く、のろのろと歩く。
レントより遅く、かろうじて進む。
できるかできぬかを見極める前に、
向こう見ずに飛びだした最前列へ。
いちいち行動を検証することなく、
その時々の熱に煽られるがままに。
危ないぞ止めときなという忠告を、
半ば無視する形で強引に推し進み、
これ以上二進も三進も行かないと、
自覚するまで脇目もふらなかった。
が、
瞬発力はもちろん持久力も衰えて、
立ちどまることの方が多くなった。
きみは言い訳の材料を探している。
だって◯◯だから◯◯できないと。
以前はアレグロで駆けぬけられた。
今じゃアンダンテも怪しいもんだ。
レントより遅く、果てしない道を、
太陽に炙られて、じりじりと進む。
後退する術を学ぶことはなかった。
引き返す道があったにも関わらず。
レントより遅く、のろのろと歩く。
レントより遅く、終止符を打つ迄。
(せめてもの)
ぼくやきみみたいな、
年寄りにできること。
行く手を阻まぬよう、
後進に道を譲ること。
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