鰯の独白

鰯は、鮪よりも栄養価が高いのです、たぶん。

Music

加藤ひさしの「ソングアプローチ」

昨夕、NHK-FM「ソングアプローチ」の最終回を聴いた。ザ・コレクターズの加藤ひさし氏がJ-POPの歌詞に辛い注文をつけ、近藤サト氏がフォローするという痛快な番組だった。歌詞(と言葉)の今日性とは何か?という問題をいろんな角度から捉えていた。毎週日曜…

日常に鳴ってる音“HIGH-LIGHT” 福岡史朗

福岡史朗2016年発表のベストアルバム、“HIGH‐LIGHT"を購入。 街中のCDショップに行くたび、気後れしてしまう。自分の知らない音楽がこれだけたくさんあるのだと思うと。しかも、手にとって聞くまでもなくおれにとってはどうでもいい音楽がほとんどで、おれの…

アジアの片隅で

悪いくせで、また『鰯の独白』を更新するのが億劫になってしまった。 というのも、何に身構えているのかは自分でもわからんが、書く気持ちを奮い立たせるのに一苦労なんである。モチーフはいろいろと思いつき、半分くらいは下書きしているにもかかわらず、発…

追悼グレッグ・レイク

medium.com (註:この記事は昨晩12月8日Mediumに投稿したものを翌日に転載しました。) 驚いた。 グレッグ・レイク(キング・クリムゾン、エマーソン・レイク&パーマー等で活躍した英国出身のベーシスト/ヴォーカリスト)のホームページに、昨日(12月7日…

ストーンドオヤジの嘆き Stoned Uncle's Lament

レナード・コーエンが亡くなってしまった。 ぼくには語るべき言葉がない。というのも、レナードはぼくにとって詩作の師であり、表現の指針であり、事象の度合いを測る物差しであった。 かれの歌からは多くを学んだが、創作への慎み深い態度、一つの詩曲をこ…

ボブ・ディランへ、文学の側からの評価を求む

※この記事は10月17日にMediumに投稿した記事を再構成したものです。 文学の側からの評価を求む なぜ、ボブ・ディランがノーヘル文学賞を授かるに至ったか、その意味を文学者や文芸評論家は真っ向から取り組んでもらいたい。 ありていに言えば「歌詞の吟味」…

ニック・ドレイク 純粋培養された孤独

社会派(笑)のぼくだけど、今は音楽のことしか書けない。 それはまだ痛みを対象化できてないからに他ならない。痛みの正体を認識できるまでには、もう少し時間がかかりそうだ。 だけど、こういうのんきな意見を目にすると、違う! と言いたくなる。 人や世…

究極の9曲(ぼくの選んだジョン・レノン)

ビートルズのこと、みんなさんざん書いているからなあ。いまさらぼくがなにか上書きすることもないと思うけど、根っからのジョン派として、これだけは言っておきたい。 ぼくは初期のレノン・ナンバーが大好きだ! 言わせてもらいますとね、過小評価されすぎ…

ムーディー・ブルース 7枚の旅券

iPhoneのアプリでYouTubeを観るのは限界がある。が、はてなブログに画像を貼りつけると(理屈は不明だけど)観られる場合もある。 たまに聴きたくなるムーディー・ブルース。連作ともいえる7枚の(フル)アルバムで試してみよう。 註;けれどもムーディー・…

葬儀のときにかけてほしい音楽?

父が亡くなったので、ささやかながら葬式をあげました。 支払いはさっさと済ませたけど、こじんまりとした式でもけっこう費用がかかるもんです。打ち明けると集まった香典の倍近くかかった。もちろん香典返しを含まず、だ。 先日、こんな記事が(葬儀にお金…

“カリフォルニア・ソウル” 輝く星座 フィフス・ディメンション

たまには幸福な気分に浸りたい。そんな時ぼくの手が伸びるのはフィフス・ディメンション。1966年に高く打ちあがった風船は、50年近くたった今でも気持ちを高揚させてくれる。流行おくれのファッションが何度もリメイクされて甦るように、五人の歌声はいつ聴…

70年代の巫女たち(金延幸子、カルメン・マキ、佐井好子)

洋楽ばかり聴いてるけど、では、日本の歌に興味がないんですか? たびたび訊かれた質問だ。そんなことはないよとぼくは面倒くさげに答えていた。 日本語の歌も聴くよ。男性よりも女性歌手が好きだな。若いころは矢野顕子とか大貫妙子(いずれ書きます)をよ…

ソロ

かつてギターソロが苦痛だった。のけぞって弾かれるとうんざりしていた。いつまで演ってんだ、適当に切り上げろと内心ぶつくさ言っていた。ジャズのアドリブも嫌いだった。そもそもインプロヴィゼーションという構造自体が予定調和的に感じたからだ。だった…

「神に誓って」フランキー・ヴァリ、記憶を頼りに歌った「瞳の面影」

フランキー・ヴァリ、1975年発売のアルバム“Closeup"は、前年にヒットした“My eyes adore you”(邦題:瞳の面影/全米1位)を含む、起死回生の一打であった。 フォー・シーズンズのリード・シンガーとして、ソロ活動も含めて長く全米ヒットチャートを賑わせ…

1968年のグレイス・スリック

ぼくはジェファーソン・エアプレインのよき理解者であるとはいいがたい。 サンフランシスコ産でほぼ同期のグレイトフル・デッドにも似て、捉えどころがないというか、魅力が伝わってこないのだ。もちろん代表的な作品は一通り修めてはいるけれど、ファンと名…

切なくも愛おしい旋律の花束、バート・バカラック

ぼくが心底くたびれたとき、まいっているときはアメリカ産のポップスを大量に聴く。ことにバート・バカラック。聴いていると荒んでいた気持ちが落ち着く。バカラックの音楽は心の痛みを和らげる特効薬なのである。 また、キャロル・キングやジム・ウェッブの…

暴動 There's a Riot Goin' On

いい歳の取り方をしたスモールタウン・ボーイ(ジミー・ソマーヴィル)

1980年代半ば、ぼくは欧州産のエレポップが大の苦手だった。ドン・ドン・ドン・ドンと刻まれるバスドラの四つ打ちが聞こえてくるたび、勘弁してよと口にしていた。ブロンスキ・ビートもその一群だと思っていたから、歯牙にもかけなかった。当時はMTV全盛期で…

エルヴィス、プリンス、エスペランサ

最近ユーチューブで観た音楽ヴィデオで秀逸なものを3つご紹介したい(順不同)。 ① プリンス sheilae.rp プリンスの訃報は、まだ余震が続く日々の最中に、追い打ちをかけるような、つらい出来事だった。亡くなってしまってはじめて存在の偉大さに気づき、喪…

夏天空の伝説 The Enid “In The Region of the Summer Stars”

The Enidが4月に来日した。観にはいけなかったが、鳴った音を想像しているだけで愉しくなる。観に行かれたるなさんの感想によれば、<イワシさんの別腹1位をライブで聴いて来ました。ゴドフリーさんも初期アルツハイマーなど微塵も感じさせない流麗なタッチ…

ゴーイング・トゥ・ランディ・カリフォルニア Kapt. Kopter and the (Fabulous) Twirly Birds

ヘイ、ランディ・カリフォルニアを知っているかい? レッド・ツェッペリン、「天国への階段」盗作の疑いで訴えられる | Led Zeppelin | BARKS音楽ニュース このニュースに、「ランディ・カリフォルニアって何者?」と反応した向きも多いと思うが、スピリッ…

ジノ・ヴァネリの兄弟仁義 「ブラザー・トゥ・ブラザー」

先日、ジノ・ヴァネリの全盛期を60分に収めたライブ映像を見つけた。 以前からYoutubeの投稿画像をブツ切りで楽しんではいたが、こうして纏まったかたちで観ると、また格別である。 実兄ジョー・ヴァネリによるよく練られたアレンジメント、故マーク・カーニ…

Björk Greatest Hits ビョークのハイパーバラッド

ビョークのベスト盤を救出。518円也。 内ジャケット写真。自らの身体を無機質なオブジェにみたてている。生と死はビョークの一貫したテーマだ。 Björk - Alarm Call 初来日は観にいった。名古屋クアトロのビョークを至近距離で目撃した。楽しんだけれど凄い…

Many of the music that he taught me

①デイヴ・ブルーベック「ブルー・ロンド・ア・ラ・ターク」 www.youtube.com ②レナード・バーンスタイン「アメリカ」(『ウエストサイド物語』より) www.youtube.com ③ジャン・シベリウス『カレリア組曲』 www.youtube.com ④バルトーク・ベーラ「アレグロ・…

普遍化する能力 ジョー・ジャクソン

ある種の輝きを有しながらもそれを普遍化する能力が幾分不足した(不足していると僕には思える)ジョー・ジャクソン 村上春樹『ダンス・ダンス・ダンス(下)』1988年 ベスト盤『ステッピン・アウト』裏ジャケット 久しぶりにブログに投稿しようと思うのだけど…

Democracy is coming to the U.S.A

Democracy Leonard Cohen It's coming through a hole in the air From those nights in Tiananmen Square It's coming from the feel That it ain't exactly real Or it's real, but it ain't exactly there From the wars against disorder From the siren…

なぜ、これができないんだろう?(バーニー・サンダースの示す「アメリカ」)

www.youtube.com おれは単純なんだろうか? これを観ていると、どうしても泣けてくるんだ。 www.youtube.com 多くを語ろうとは思わない。たった1分だから観てください。 アメリカ合衆国の大統領予備選、民主党の候補者バーニー・サンダースのキャンペーンコ…

アイス(キャメル/アンディ・ラティマー)

久しぶりに音楽の話をしよう。寒い冬に聴きたくなるのって、きみなら何だろう? ぼくならキャメルだな。奥ゆかしく控えめなサウンドは(とくに日本では)プログレッシブ・ロックというジャンルの垣根を越えて多くのリスナーに支持されている。 『ミラージュ…

カットアップ / フォールドイン あるいは予め定められた批評性

1.意図的に未編集の記事にしてみよう。それを人は「でたらめ」と称すかもしれない。 2.『ナッシング・ハズ・チェンジド』の曲順。ふつうならキャリアの最初から順を追って並べるところを、その時点の最新作「スー」から過去へ向かって遡上していく。三枚組の…

牽強付会かもしれないが……

年末年始は、三つの音楽を主に聴いていた。ジャック・ブレルの1966年オランピア劇場におけるリサイタルの映像、カザルストリオによるメンデルスゾーンのピアノ三重奏曲、そしてクリーデンス・クリアウォーター・リバイバルの二枚組ベスト盤。この三者に…