鰯の独白

鰯は、鮪よりも栄養価が高いのです、たぶん。

ザ・ベスト・オヴ “鰯の聴いた音楽” 2018年2月~10月

 

Twitterにモーメントという機能がある。使い勝手は良くなかったが、公式仕様だったこともあり、重宝していた。ところが先日(10/23)より、スマフォのアプリで作成できなくなった。タブレットでもダメだった。自分の投稿したツイートを手軽に編集できないのなら使っている意味がない。ぼくは『鰯の聴いた音楽』と銘打って、日々Spotifyで“発見”した音楽をツイートし、半月ごとモーメントにまとめていたが、ここらが潮時だ、やめようと決意した。

では、この半年ぼくがどのような音楽を聴いていたか、ブログに訪問してくれたみなさんにも、お伝えしようと思う。

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いちおう前から言っていますがぼくは政治と社会問題に特化したアカウントではありません。そればっかり考えてたらちっ息してしまうよ。今後は音楽の話題をもう少し増やそうと思います。YouTubeではなく、Spotifyでね。

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2018年2月のベストトラックは、3年前のアルバムですがリアン・ラ・ハヴァスの『ブラッド』より「グリーン・アンド・ゴールド」。これ以外にも佳曲が多い。なによりこの手の音楽にはめずらしく質感が柔らかで温もりを感じる。ギター一本で弾き語れる地力がある歌手だ。

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I listened to the music in March but I still can't find common points. Please let me point out if you think there is a cord or theme that will pass through these.

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2018年3月前半のベストトラックは、狭間美帆のザ・モンク『ライヴ・アット・ビムハウス』より、「13日の金曜日」。うねる木管のアンサンブルはギル・エヴァンスマリア・シュナイダーをほうふつとさせるが、気難しくなく、人なつこい。音楽が各パートのソロ回しの道具とならないよう設計された新手の「ジャズ」。

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2018年3月後半のベストトラックは、エグベルト・デスモンチ1980年のアルバム『シルセルチ(サーカスの意)』より“Equilibrista”。グーグル翻訳だと平衡者、すなわち「綱渡り芸人」。ありとあらゆる要素が一曲になだれこみ、しかも混沌とせず統合し、相互が干渉せず均衡を保ったままの状態を極彩色に描きだしている。

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2018年4月前半のベストトラックは、チカーノ・バットマン17年の力作『フリーダム・イズ・フリー』に収録の「エンジェル・チャイルド」。LAを拠点に活動するラテンソウル系バンドで、演奏能力は高いがどこかとぼけた味がある。MPBからザッパまで、さまざまな影響を消化し、自分たち流の音楽を拵えている。

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2018年4月後半のベストトラックは、渡辺亨さんの編んだCD-Rに収められていた、“It's Been A Long Long Day” 。誰の曲だったか、確かに知ってるんだけど、コステロ? いや違う、調べたらポール・サイモンだった。原曲をはるかに凌ぐ、ノルウェーの歌手ラドカ・トネフ(1952~1982)のカヴァー。録音はノラ・ジョーンズが登場する20年前。

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2018年5月前半のベストトラックは、晴れた朝にぴったり。VENTO EM MADEIRA(ヴェント・エン・マデイラ)の“BRASILIANA”。プーランク室内楽みたいな木管の、繊細で、スリリングなアンサンブル。チアゴ・コスタが弾く精緻なタッチのピアノ。モニカ・サルマーゾのスキャットも美しい、2013年の傑作。

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2018年5月後半のベストトラックは、「あなたもロボットになれる」2014年、坂本慎太郎。<不安や虚無から解放される素晴らしいロボットになろうよ、日本の○割が賛成している~>というアイロニカルな内容の歌詞を子ども合唱団が歌う。より出来のよいカップリング曲「グッド・ラック」は野口五郎のカヴァーだった。

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下の写真は某書店のコーナーに描かれたE画伯とY画伯の直筆壁画です。

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2018年6月前半のベストトラックは、Tierra Whackの

“Whack World”。1曲1分、全15曲15分。いずれのトラックにもアイディアと閃きがあり、退屈とは無縁だ。ポップ音楽が更新を怠らず、今を映しだす鏡であるかぎり、古びることはない。

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2018年6月後半のベストトラックは、カマシ・ワシントンTsの新譜。一度しにかけたジャンルのジャズが今また最前線に躍り出たことを実感。どのトラックもすばらしいが、とくにこの「スペース・トラベラーズ・ララバイ」の大風呂敷にはたまげた。まさにプログレッシヴ。ロック、完ぺきに負けてる。

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2018年7月前半のベストトラックは、ロバート・グラスパーのスーパーグループR+R=NOWの、“Resting Warrior”。10分近くの長尺曲だが、その間ずっとジャスティン・タイソンのドラムが自由奔放・変幻自在に鳴っている。FM番組「ウィークエンドサンシャイン」でかかったときに、ピーター・バラカンも驚嘆していた。

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もう一曲。ボビー・ライト74年の「ブラッド・オヴ・アン・アメリカン」。今朝、知った歌だ。

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Spotifyはある意味こわい。だって毎週カードを切ってくる。「ホラ、きみの好みはこんなんだろ?」「こういうのもあるけど?」「むかしの馴染みばかりじゃなくてさ、最近の流行も聴いてごらんよ」と “Discover Weekly”と “Release Radar”を送ってくるんだから。ぼくの聴く傾向はお見通しってわけだ。ときどき「これは虜になってるってことかな」と訝しむことがある。個人の好みが集約され、数量化されたところの。でも、まあ、どうだっていいや、こんなすばらしい歌にめぐり合えるのならば。

 

 

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2018年7月後半のベストトラックは、ジョーダン・ラカイ(豪)17年のライブ。Spotifyは有望株に小規模のライブを企画するが、これはジェフ・バックリーの"Sin-e"を思わす清冽さがある。今ふうのサウンドメイクが得意なSSWだけど、ギミックなしの直球アレンジが楽想に相応しいんじゃなかろうか。今後の活躍に期待。

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2018年8月前半のベストトラックは、朝のマリンバと呼びたくなるチェンバーミュージック。ダリウス・ミヨー(仏・1892〜1974)の異国情緒あふれる音楽は五感を快くマッサージしてくれる。パーカーションを多用したアンサンブルは小難しくなく何れもおもしろいが、とりわけこの小編成の録音は編曲と演奏技術が巧みで聴き惚れる。

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では、鰯の聴いた音楽(8月後半)をお届けします。今回は暑気払いの選曲ゆえ、あまり冒険してません。限りなくイージーリスニングに近い内容です。イージ好かん、なんちて。

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2018年8月後半のベストトラックは、クラレンス・ヘンリーの「エイント・ガット・ノー・ホーム」。

「こないだ、FMでクラレンス・フロッグマン・ヘンリーって、ニューオリンズの歌手がかかったんだけど」

「あー、あるよ。これでしょ」

打てば響く、ぼくのR&Bスクール。

「ジャケット、最高だろ?」

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ちなみにこの「寝取られ男」ジャケはPヴァインの編集した日本盤。同じデザインの米盤に、例のカエル声が聞こえる「エイント・ガット・ノー・ホーム」は収められていない。地声 → 裏声 → カエル声の三変幻をベスト盤よりどーぞ。

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2018年9月前半のベストトラックは、ブラジルのシンガーソングライターでマルチプレーヤーのアントニオ・ロウレイロ。今もっとも手ごたえある作品を生みだせるアーティスト。例えばピーター・ガブリエル等を好きな方にお勧めしたい。これは今年5月にリリースされたアルバム“Só”の収録曲だが、アントニオ・ロウレイロにいちばん近い感性のアーティストは(アルメニア出身のピアニスト)ティグラン・ハマシアンだと思う。鋭角的なエッジに共通性がある。

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2018年9月後半のベストトラックは、アンソニー・ウィルソン2016年のアルバム“Frogtown”より、チャールズ・ロイドの自由闊達なサックスが耳を惹く“Your Footprints”を。しかし、この歌の最大の魅力はアンソニー自身の内省的なヴォーカルと、歌詞と旋律との調和にある。他にも優れた楽曲がいくつもある、傑作。

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2018年10月前半のベストトラックは、アマーロ・フレイタス。ブラジリアン・ジャズの新鋭だそうだ。タッチの精確さ、使う和声の洗練など聞きどころは多い。9/21リリースの“Rasif”は、スペースを生かしたリズム構造が斬新で、ピアノとシンバルがつかず離れずで並走する感じがたまらなく、いい。

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と、モーメントにまとめたのはここまで。ブラジルに傾倒したのは、やはりエルメート・パスコアールを八代で観た影響が大であろう。

 

【過去記事】

kp4323w3255b5t267.hatenablog.com

ぼくがSpotifyというサブスクリプションを利用している最大の理由は、少しでもアーティストへ還元されればの思いなんだけど、それともう一つは「消費者」としての立場を明確にしておきたいからです。「楽しむ=消費」とは思いませんが、録音されたモノを消費しているんだという自覚は必要だとも思うのです。

 

 

さて、モーメント毎に一曲という基準でベストトラックを選んできたが、あと10曲、泣くなく外したボートラを貼っておこう。

 

①デヴィッド・クロスビーには、まったく頭が下がる。だってこの『スカイ・トレイル』は昨年の作品だよ。つまり75歳の爺さまが、スティーリー・ダンなみに緻密なアレンジで、しかもフレッシュな音楽を拵えたんだ。声もリズムも感性も衰えしらずとは、すごいじゃないですか。

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エバーハルト・ウェーバー75年『イエロー・フィールズ』の冒頭「タッチ」。典型的なECM録音だけど、これほど玄妙な音響はなかなか見あたらない。ウェーバーのうごめくベースと相まって、ここにあらざるどこかを想わせる。ジャズ? 現代音楽? いいやプログレ

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スコット・ウォーカーを聴いて眠ろう。78年、ウォーカー・ブラザース名義でのアルバム『ナイト・フライツ』の表題曲。ブライアン・イーノが「これを聴くのは屈辱的だ。今でも超えられない」と語っているが、ホント、どうしてこんな弦アレンジを思いつくんだろ?ちなみにクレジットは、

John and Scott Walker – vocals

Les Davidson – guitar solo

Jim Sullivan – rhythm guitar

Peter Van Hooke – drums

Mo Foster – bass

ギターソロ、鋭い。

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④それにしても、ロバート・ワイアットの音楽は何故こんなにもせつなくも気高いんだろう。在英ブラジル人歌手モニカ・ヴァスセンコロスとの「スティル・イン・ザ・ダーク」では、カンタベリー特有の浮遊感とサウダージの陰翳が複雑に絡みあう。聴くたびに胸が締めつけられる。

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Spotifyは週の始めに<フレッシュな音楽を盛り込んだ今週のMIXテープをお届けします。新しい音楽との出会いをお楽しみください。毎週月曜日に更新されますので、気に入った曲はその前に保存してください>と連絡が入る。嬉しいけれど、好みを見透かされているようで怖いね。最近だと、こんな珍品を送りつけてきた。ヤマスキ・シンガーズ。何度聞いても爆笑、嬉しいッ!

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⑥長閑な昏さがたまらない。スウェーデンダブルベース奏者オスカル・シェニング率いるグループの2010年の作品『ベオグラード・テープ』よりヴェルヴェット・アンダーグラウンド的な8分音符の連打がロックしているジャズ、「私は私の記憶を交換したい」を。

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⑦“Blue Moon” 2017 album ver.

Engine-EarZ Experiment; are a UK based live dubstep collective formed in 2009 by multi-instrumentalist/DJ/producer Prashant Mistry.

ジャケットに惹かれて聴いたら刺激的な音響デザインだった。歌はノルウェーのケイト・ハヴネヴィク。でも、菅野よう子の作るアニメソングみたい。

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⑧今年の夏はゴージャスなジャズヴォーカルを好んで聴いた。とりわけジュリー・ロンドン版の「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」を。これほど洒落た弦アレンジは滅多にない。アーニー・フリードマンの編曲。1963年の“The End of the World ”に収録。

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⑨テリー・キャリアー1972年の“Occasional Rain”より“Ordinary Joe”を。歌詞がすばらしい。

“Now I'd be the last to deny

 that I'm just an average guy

 and don't you know each little bird in the sky

 Is just a little bit freer than I”

「時おり雨」の日に。

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⑩9月30日。台風、やはりかなり激しいです。ぼくは家でおとなしくしています。瓦はふきかえましたが、雨漏りは相変わらず。ところでライリー・ウォーカーのこの曲、快速エイトビートがご機嫌ですが、後半の展開におけるしなやかなドラムスの揺らし、かっこよすぎだとは思いませんか?

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まだまだ紹介しきれないけど、きりがない。このへんでお終いにします。モーメントは瞬間、なればこそ長期保存は不可能。インターネットに永遠の二文字はない。聞けば「はてなダイアリー」もサービス終了だとか。困った、ぼくは没記事を非公開であそこに収めていたのだが移動先を考えなくては。もう一個、はてなブログのアカウントを作るか。あー、でも面倒くさいや!

あ、もちろんTwitterやブログでの音楽紹介はやめませんよ。たぶん命つきるまで続けることだろう。こうやって毎日音楽に接していれば、また新しい驚きにめぐり合える可能性があるから。

♪ モーメン、モーメン、モーメン、モーメーント!

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【追記】

今年(2018)の“Myトップソング”をSpotifyが自動的に編集してくれた。この記事と被る部分がずいぶんあるけど、日ごろぼくがどんな音楽を好んで聴いているかがよく分かるラインナップだ。時間に余裕のある方はぜひ聴いてみてほしい。

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しかし、スコット・ウォーカーがやたらと多いなあ。