昨年(2017)下半期で気に入った動画を拾い集めてみました。
1976 - Ugly, Dirty and Bad / Brutti, Sporchi e Cattivi
たとえば、このシーンに遭遇しなかったら、私が『醜い奴、汚い奴、悪い奴』というイタリア映画を知ることはなかっただろう。YouTubeは未知への入り口。
PJ Harvey - Dress - HD Live (V Festival 2003)
いい。
ポリー・ジーン・ハーヴェイは最高にすてきな女性。
Barney Kessel – Kessel's Kit (Full Album/Vinyl) 1969
私の好きなジャズギタリストで五指に入るバーニー・ケッセルの、イタリアのミュージシャンと組んだ楽しいアルバム。何も聞きたくないときに手が伸びる類のレコード。これはSpotifyのアルバムリストに今のところ見当たらない。が、入ったら差し替えます。
こういうジャケットを見ると、とりあえずどんな音だか確かめたくなるのが人情ってモンですよ。ま、たいてい昔の天気予報で流れるような音楽だけど、この4枚はどれも当たり。とくに一番下のは名盤。そういや以前、知人のギタリストにデイヴィ・グレアムを聞かせたら、ガボール・ザボとの共通点(スケールとフレージング)を指摘していたっけ。
チェンバロって鋭角的な響きが意外とジャズやロックに合う楽器だよね? 最初にそう思ったのはEL&Pの「タンク」と『中学生日記』のテーマ音楽。これ、あらためて聴くとピチカートファイヴみたい。
Cannonball Adderley Quintet feat. Joe Zawinul (Oslo, 1969) NRK (c)
ジョー・ザヴィヌル在籍時のキャノンボール・アダレイ5。親しみやすさと先進性が程よくブレンドし、とても聴き心地よい。
Super Rare Pink Floyd Atom Heart Mother clip 1971 Austria
好きなフィルム。ピンク・フロイド以外にもウェザー・リポート、フリードリヒ・グルダ、タンジェリン・ドリーム等が映る。ザヴィヌル自ら鍵盤楽器をセッティングするシーンも。みんなこうしてキャリアを積んでいったんだな。
私はフィルム(起こし)の粗い質感が好きなのだ、きっと。
Popol Vuh - Letzte Tage, Letzte Nachte
お花畑を駆ける若者ふたり。このフィルムを観るたび胸の締めつけられる思いがする。
モノクロってイメージを喚起するよね。
必見! クラフトワークの叩きだす直線的な音の刺激もさることながら、画面に映し出された若者たちの真剣なまなざしに胸を打たれる。しかも、この時点でトランス・テクノの殆ど全部の要素が出揃っている(47分の長尺版もあり)。
あと、モノクロで定期的に観たくなる映像は、第2期フェアポート・コンヴェンション。
ペッグb、マタックスdsのリズムセクションに、スウォーブリックvn、ニコルとトンプソンgという最強の布陣。演奏に比べると歌は「スロース」なものですが。
Fairport Convention-Dirty Linen (Glastonbury Live 1971)
リチャード・トンプソン脱退後のフェアポート 。グラストンベリー・フェスティバル出演時の模様。テンポ加速してパンキッシュなトラッドに。デイヴ・ペッグのピック弾きは「これがベース?」と呆れるほど速い。観客はノリノリで踊りまくる。みんなとても楽しそうだ。
Fotheringay Live at The Beat Club 1970
サンディ・デニー(下写真)関連で一番聴いたアルバムは(表絵が少女マンガみたいなイラストの)フォザリンゲイのファースト。フェアポートやソロ諸作より好きかもしれない。サンディ以外のメンバーも歌がうまいし、聴いていてイマジネーションが広がる。
日本のフォーク・ロックシーンにも多大な影響を与えた、ポコは必須科目だと思う。彼らの代表曲「シマロンの薔薇」は、オリジナルの雄大さに軍配を挙げたい。エミルー・ハリスのきまじめな歌声も捨てがたいけど。ティモシー・シュミット在籍時の映像を。
ポコは初期がとっても良いんだよ。そこはかとなくサイケの風味もあるし、バッファロー・スプリングフィールドとイーグルスを結ぶミッシングリンクって感じ。69年の「ピッキン・アップ・ザ ・ピーシズ」よりインストルメンタルを。この快適な流れは後々ドゥービーズの『スタンピード』あたりに受け継がれる要素。
で、Pocoをカタカナ表記すると、なんかマヌケだよね? Devoをディーボ、も。
どうして80年代初頭のヘヴィメタルが嫌いだったのかを先日から考えている。ハードロックを私は人並以上に好きだったはずだ。シン・リジィ、フォガット、パット・トラヴァーズあたりのB級(ゴメン)を好んで聞いていたし、エアロスミスはもちろん、トミー・ボーリンのいた第4期ディープ・パープルも大好きだった。
キッスも楽しかったし、元気が出た。私にとってハードロックはヘルシーな音楽だった。だからヴァン・ヘイレンもとうぜん歓迎した。コーラスがバッチリきまってポップだったら、たいていオッケーだった。演奏の優劣よりも楽曲自体のノリのよさに感応していた。けど、
Pat Travers - Live At Rockpalast - Boom Boom (Live Video)
パンクの台頭で無邪気に楽しむことができなくなった。長い髪がとつぜん時代遅れに感じて。偉大なレッド・ツェッペリンでさえ、プラントのイメージが古くさく思えた。そのように躾けられたのはメディアや広告の影響か、それとも自発的なものなのかは分からないが、私はそれから数年間、長い髪のロックを意識の外に追いやっていた。ライブエイドのクイーンの圧倒的なパフォーマンスとメタリカの登場までは。
私には野暮を承知で温和な音楽談義に政治を持ちこむ悪い癖がある。
Mauro Pagani - The big man (Official Video)
マウロ・パガーニ。プログレ好きなら知らないとは言わせない、プレミアータ・フォルネリア・マルコーニ(PFM)にも在籍していた彼が、大統領になる前にドナルド・トランプを思いっきり風刺してますね。や、痛快だわ。
I THINK IT'S GOING TO RAIN TODAY - Randy Newman (BBC Live 1971)
人の親切心が溢れだし、今日は雨が降りそうだ。
寂しい、さびしい。
ぼくは街角に空き缶を蹴とばす。友人に、するように。
「悲しい雨が」ランディ・ニューマン、ファーストアルバムに収録。
誤訳のしようがないほどの強烈なフックだ。こんな歌詞、他に誰が書けるだろう。
Harry Nilsson - Without Her (1971)
ハリー・ニルソンといえば「ウィズアウト・ユー」が有名だけど、私は「ハー」の方が好き。以前は弦楽四重奏をバックのオリジナルよりもブラッド・スウェット&ティアーズのジャズボッサアレンジが好みだったけど、この映像を観たら、やっぱり本家の歌が最高。
Santana ~ Gypsy Queen } Savor } Jingo
サンタナの凄みを知るに最適な映像。カメラは集中する奏者に接近し、目もと口もと手先指先の動きを捉える。この音の渦が世界を熱狂させたのだ。
クラシックもまた「芸能」であると、私は思うのだよね。アーティストとしての真価は時が審判を下す。今を体現する三人は、どうか?
最近バズっているユジャ・ワン。彼女の「どーだ、このヤロー、参ったか」的なフィニッシュは、とり澄ましたクラシック界に風穴を開ける「突き破り」の爽快感がある。ただの早弾きではない。
Zubin Mehta with Khatia Buniatishvili - Schumann: Piano Concerto in A Minor, Op. 54
殿方の視線を泳がせる、グルジア出身のカティア・ブニアティシヴィリ(あ、今はジョージアというのか)。こないだアップされていた仏のテレビ番組では、プリンスやデヴィッド・ボウイまで弾いていたけど、彼女がマルタ・アルゲリッチのような大輪の花を咲かすかどうかは未知数。
ピアノって怖い楽器で、人の数だけ意見が異なり、好き嫌いがもろに出る。私はエレーヌ・グリモーの容姿をすてきだなと思うけど、彼女の演奏は1分も聴いていられない。今どきの録音の硬い音質のせいなのかもしれないが。
Chostakovitch - Concerto pour violon n°1 de Chostakovitch - Lisa Batiashvili (répétition)
いまエフエムでショスタコ入門に最適なヴァイオリン協奏曲が流れている。ヴァイオリンだと今はメディア戦略に長けたヒラリー・ハーンが人気を博しており、比べるとリサ・バティアシュヴィリはややインパクトに欠けるものの、聴いていて和やかな気持ちになる音色だ。今後よりアートの熟成しそうな予感を抱かせる。
先日の「ラスベガス・ストリップ銃乱射事件」で思い出した映画が『ナッシュビル』。
Nashville, (1975), by Robert Altman. Soundtrack: "I'm easy", performed by Keith Carradine. HD
映画の中で唯一いい歌だなと思っていた、この歌のイロニーに気づいたのはごく最近。
米カントリー音楽って、徹底的に明るいと、何故かあべこべに不気味な印象を受ける。
Starland Vocal Band - Afternoon Delight (1976) Uncut Video
番狂わせで76年グラミー新人賞を授かったために色眼鏡で見られたグループだけど、これ、そんな言われるほど悪い曲かなあ。プログレッシヴ・カントリーとでも申しましょうか、あらゆるパートが綿密に計算されている隙のなさが当時隆盛のABBA(アバ)っぽくもある。と私は好意的に捉えたけどね。
気が滅入った時には、ウィルコ・ジョンソンの鋭角的な爪弾きを観るに限る。
DR FEELGOOD LIVE 1975 TV SHOW - FULL CONCERT - FEAT. WILKO JOHNSON
この、ウィルコ・ジョンソンと同じ色した・カッティングに適した、トーカイ製のテレキャスターモデルを持っていたんだけど、残念ながら紛失してしまった。
Dr Feelgood - Live At Southend Kursaal (15 minutes of magic in the 4 songs)
グレイト! としか言いようがないでしょ、こんなの見せつけられたら。バンドの一体感も凄いけど、リー・ブリローの野太い声が、もう。
Ian Dury and the Blockheads - Blockheads, Live with Wilko Johnson (Game of Thrones & Dr Feelgood)
8小節、スリーコードをひたすら繰り返すだけの楽曲構造だのに、なんと豊かで知的な音楽だろう。
だけど、あーきりがないぞコレは。お腹も減ってきたし、最終コーナーに入ろうか。
Can't Turn You Loose - Otis Redding
音楽の、人の、底しれぬパワーを感じる。歌はもちろん、ドラムの推進力はどうだ!
ところで、先日ひさしぶりに映画『ブルース・ブラザーズ』を観たんだ。
もう何度目だろう? やー楽しかったなあ。
早くも一周忌が過ぎたけど、キャリー・フィッシャー大好き!
ちなみに先日、ツアー活動から引退することを表明した、ポール・サイモンの「ハーツ・アンド・ボーンズ」(名曲だ)は、キャリー・フィッシャーとの短い結婚生活が歌詞に反映している。
Paul Simon - Hearts and Bones (Carrie Fisher tribute)
ポール・サイモンほど循環コードの構造と、そこからの逸脱を考え抜いた人はいないと思う。
では、また気が向いたら半年先に続編を。
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