鰯の独白

鰯は、鮪よりも栄養価が高いのです、たぶん。

マンドリルたちが駆け抜けた夜

 

不覚にも風邪をひいてしまったが、福岡が九州に上陸するとあらば、万難を排して駆けつけねばなるまい。11月18日(土)ぼくと妻は夕刻の鹿児島中央駅に降り立った。

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鹿児島市住吉町の“GOOD NEIGHBORS”はしゃれた感じのカフェだった。小腹のすいていたぼくは、おにぎりと豚汁のセットを注文したが、とても美味かった。

🔗 GOOD NEIGHBORS -- 鹿児島市住吉町にある雑貨、家具なども扱うカフェです。 ※

やがて室内がほの暗くなり、午後7時過ぎ、4人のメンバーが登場した。

福岡史朗SPEEDY MANDRILL & 青山陽一
福岡史朗 ボーカル、ギター
大久保由希 ボーカル、ドラムス
磯崎憲一郎 ベース
青山陽一 ボーカル、ギター

第1部は、福岡2017年の『Speedy Mandrill』から、全14曲をアルバムの曲順どおりに披露した。

さらりと書いてしまったが、往年のプログレバンドじゃあるまいに、アルバム一枚まるごと再現するとは、予想はしていたものの、驚いた。全曲オリジナルだぜ? 大したヤツだ。

福岡の書く曲はシンプルだけど難しそうだ。とくに『スピーディ〜』にはいたるところにトラップがしかけられている。けれども4人のメンバーは淡々と演奏する。歌えるドラマー大久保由希が曲のすみずみまで把握しているので、多少のズレにも即応できるのだろう。

前半のベストナンバーは「シェルター」。アルバムの中では地味な印象だったが、福岡のリズムギター磯崎憲一郎のベースのリフレインが噛みあい、その間を縫って青山陽一が伸びやかなリードを聞かせた。

スペースにゆとりのある曲が、もう少しあっていいのかも。音数が少なくても、聴いている方はそれほど不足を感じないものだ。ロビー・ロバートソンは、不調のときはいつも「ゲット・アップ・ジェイク」を演奏すると言っていた。ザ・バンドにだって調子の波はあるものだ。ばかみたいに簡単な曲を作ってみてはどうだろう?

 

第2部は青山を抜いたトリオ編成で、前作『High=Light』から3曲*。続いて青山が弾き語りで1曲披露、ふたたびトリオがステージに戻り、青山のヴォーカルで3曲。青山の声はシブく、ギターは数学的だ。音の配列が一味違うなと唸った。

うち1曲はJ.J.ケイルのカヴァーだった。うーむ、青山と福岡の好みが一致するところだな、このチョイス。

そしてラストスパート。「ロードスター」を皮切りに、福岡の代表的なナンバーが矢継ぎ早に繰り出される。

4ピース・バンドってのは独特のたたずまいを醸しだすものだ。一人ひとりの個性が際立つと魅力はさらに倍加する。他の何者かに例えるのは失礼だろうけど、今夜ぼくは目の前に並んだ4人の姿をみて、そこはかとなく漂う知的な雰囲気が、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドみたいだと思った。

にしても、どうして福岡は客席から見て左端の舞台上手に位置するのだろう?

2セットぶっ通しで歌っても声がつぶれない、タフな喉したヴォーカルなのに。

バンドの音を客観的に捉えようと努めているからか?

オレについてこい式のリーダーシップはスマートじゃないと思ってんのかな?

PAスピーカーの陰に隠れて見えにくかったよ。

アンコール。地元のハープ奏者を加えての「ライオンメリー」は文句ナシの最高だった。大久保の刻むハイハットもビシバシ冴えまくっていた。

さて福岡は? と手もとを見れば、カッティングする手を休めて、バンドの成り行きをじっと見つめていた。

 

ぼくは今回、批評めいたことを書いてやろうと計画していた。が、その企ては未遂に終わりそうだ。

妻に言わせるとぼくは「根っからの福岡さんのファン」だそうだ。本人の前でバラすなよンなこと、照れるじゃないか。

確かに、ぜんぶの歌を諳んじているぼくは、ぜんぶの歌をうたっていた。ただし「大声で歌われると他の客の迷惑になります」と昨今は大御所がうるさいから控えめな声で、ね。

とりあえず感じたままを列挙してみた。今日中に投稿しますと宣言した以上は。でも、頭の芯がぼんやりして言葉が上手くまとまらないや。

とにかく、ぼくは日頃の憂さを忘れて楽しんだ。ゴキゲンな夜だった。みんなも福岡史朗のライブを聴きに行けばいいのに。きっと愉快な時を過ごせるから、近くの街に来たら絶対に見逃すな。これを読んでるきみにぼくが言いたいことは、畢竟これだけだ。

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福岡史朗の使用ギター。テスコだと思う、とのこと。

「下駄やがギター作ってたころのやつですね、これは」

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福岡史朗の使用アンプ。やや割れ気味の歪んだトーンをマイクで拾う。

「レコーディングで使ってンのは、これより一回り大きいやつですね」 

足元にアタッチメントは見当たらなかった。

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ぼくはミーハーだから、遠慮なくサインをもらう。上は青山陽一さんのベスト盤。

「私は録音に参加してないんだけど、サインしてもいいのかな?」

もちろんです磯崎先生。で、次回のブログには『電車道』の記事を書くつもりです。

註:書いたはいいが、あまりにも的外れなので現在は公開しておりません。

(あゝまたしても自分でハードルを上げてしまった……)と、ぼくは心の中で呟いた。

そこでぼくと妻はそそくさと「良き隣人」を後にし、最終の新幹線が待つ鹿児島中央駅へ急ぐのだった。

 

 

【参考資料】
 

🔗 福岡史朗「SPEEDY MANDRILL」発売記念ライブ 2017/07/16 1st set

🔗 福岡史朗「SPEEDY MANDRILL」発売記念ライブ 2017/07/16 2nd set

あくまでも参考資料だからね。じっさいに観てみないと福岡の凄さは分かりませんぜ旦那。

 

【過去記事】

kp4323w3255b5t267.hatenablog.com

kp4323w3255b5t267.hatenablog.com

何か思いついたら、また書き足すかもしれませんが、今回これにて!

 

【追加】

グッドネイバース」のオーナーは、ジャマイカ音楽に造詣の深い評論家の藤川毅さんで、卓を操っていたのが御本人だった。道理で、低音が充実していると思った。

*当日のセットリストは、青山陽一さん自身がブログでザッパ並に詳しく記している。

🔗 11/18セットリスト | Trouble Everyday

これによるとトリオでの演奏は4曲である。まったく、ぼくの記憶はあてにならない。

🔗 良き隣人のスピンオフ – 岩下 啓亮 – Medium