鰯の独白

鰯は、鮪よりも栄養価が高いのです、たぶん。

エロスとリベラル左派はなぜ相性が悪いか

 

というタイトルの記事を九割がた書きあげていた。

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けれども発表をためらった。その理由は、みずからこしらえた幻想を決め打ちしているような感じがしてならなかったからだ。より正確なことばを使えば「答えあわせ」のように思えたのである。かような気持ちに陥ったのは昨夜リツイートした引用先の記事が端緒となっている。

イワシ タケ イスケ@cohen_kanrinin

この記事は必読です。幻想に酔いしれ、「答え合わせ」に勤しむ者(男性)たちへの痛烈なカウンターパンチであるとともに、痛みと憤りの原因を突きとめ、今この時代に詩人であることの意味と、私が詩を書く理由を、ラスト数行でみごとに言い表している。cakes.mu/posts/13716

posted at 01:40:06

早い話ぼくは躓き、そして怯んだ。面白おかしくヒロイズムとルッキズムを絡めて、表題についての記事を軽めに仕上げたが、昨夜のツイートが300RTを越えて広がる今、このタイミングでエントリーすれば、ややこしい事態に陥るかもと心配したのである。

臆病者イワシ。

表題を読めば、「鰯の独白」の賢明なる読者には、ぼくがどのような考察を展開したか、ある程度の予測がつくだろう。ぼくは書いた記事を既に非公開の格納庫に収めてしまったが、ここに訪問してくださった方々のために、どのような内容だったのかを箇条書きに記しておく。

 

  1. 野党の側に、なにゆえ魅力的なリーダーが登場しないのだろうか。その理由は(自分を含む)リベラル左派の旺盛な批評(批判)精神にあると考えられる。
  2. 政権与党を支持する層は基本的に代表者を批判しない。担ぐ神輿は軽くてもかまわないと割り切り、応援に徹する。対して左派は理想を追求し、代表者が理想にそぐわぬと見做すや、ただちに批判しはじめる連鎖反応的な構造がある。
  3. 野党の側に人材がいないわけではない。ただ、その長所を発見しない、発揮させないリベラル左派の指向性に問題がある。みずから選んだはずの代表者だのに、揚げ足取りや粗さがしに血道をあげるばかりでは政権奪取など不可能である。
  4. リーダーに相応しい条件を兼ね備えた候補は彗星のごとく現れるわけではない。リーダーを育てるという視点がリベラル左派には決定的に欠けている。
  5. 政権与党の臆面もないポピュリズムに拮抗するには、左派も戦略的にそれを採用する必要があるのではないか。しかしこのような仮説は純粋ではないとしばしば批判の対象となる。高邁な理念を実現する前に、私たち左派は既に疲れている。
  6. リーダーの資質に欠くことのできない要素として「エロス」をあげたい。エロスとは単にセックスアピールを示すのではなく、押し出しの強さや頼りがいといった漠然とした印象も含まれる。が、これもリベラル左派はいみ嫌う傾向にある。
  7. エロスを発揮するには、本人の努力以上に周囲の絶え間ない後押しが必要である。水を与えなければ花は咲かないし、褒めてやらなければ学力は伸びない。議員とて同じである。彼・彼女らの内に潜むエロスの素質を支持者は見出し、引き出してやらねばならない。
  8. 華や艶のある代表者にはおのずと支持が集まる。リーダーを育てる地道なプロセスをリベラル左派は順を追って実行できるだろうか。調子に乗るなと叩くのはしごく簡単だが、レールを外すばかりでは明日のリーダーは永遠に育たない。

以上の内容について、先の蓮舫氏の「つまらない」発言を引いたり、志位氏の見てくれこそがリベラル左派の最大公約数であると述べたり、まあ好き勝手を書いた。が、今「男が勃ち・女が濡れる」論を披露するのはあまり得策ではない。エロスの根源については、もう少しつっこんで、みてくれや言動よりも生来に備わったチャーム〔魅力)が決め手になるとも書いた。しかし額面通り受けとめられたら、ぼくの言わんとするところは優生学的だと誤解されるおそれがある。そう判断されるのは甚だ心外だ。

よって、今回の記事は骨子だけを提示するにとどめた。いずれこの内容は形を変え、より飲みこみやすい体裁で再掲するだろう。それは論考形式ではなく、寓話の器によそおうかもしれない。いずれにせよ今回、書いた文をそのまま発表するのは避けた方が賢明だとの判断を下したのである。

それとも、

ぼくは少しばかり拗ねているだけなのか。

 

 

 

【抜粋】

アメリカの対ソ映画『ドクトル・ジバコ(1965年)』には、パーシャという名の鋼鉄の意思を持つ革命家が登場する。今回(記事を封印するにあたって)単純なぼくは非情な権力者として封印列車を駆るパーシャの横顔を想起した。感情を抑制した彼の表情はゾクッとするほどセクシーだった。

もう一つ。

若者たちの活躍に垣間見えた微かな希望の兆しを、人工芝運動という烙印で貶める向きに、ぼくは心から失望している。

 

【解題】※