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鰯の独白

鰯は、鮪よりも栄養価が高いのです、たぶん。

「神に誓って」フランキー・ヴァリ、記憶を頼りに歌った「瞳の面影」

Music

 

フランキー・ヴァリ、1975年発売のアルバム“Closeup"は、前年にヒットした“My eyes adore you”(邦題:瞳の面影/全米1位)を含む、起死回生の一打であった。

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フォー・シーズンズのリード・シンガーとして、ソロ活動も含めて長く全米ヒットチャートを賑わせていたフランキー・ヴァリだったが、70年代に入るとレコードの売り上げが伸び悩む。が、イタリア系アメリカンはへこたれない。モータウンで録音したマスターテープを自腹で買い取ると、持ち前のガッツでレコード会社に売りこみかける。そして新興のレコード会社、プライベート・ストックの<ラリー・ウッタルは、テープを5回巻き戻して聴き続け、「この曲が欲しい」と言った(フランキー・ヴァリ『瞳の面影』/矢口清治氏のライナーノーツより)>のである。そう言わせたのはもちろんフランキー自身の情熱もあろうが、ボブ・クルーとケニー・ノーランによる楽曲の完成度に尽きるだろう。それほど「瞳の面影」はよくできたポップスであり、そののちスタンダードになろだろう「格」を備えていた。

聴いてみようか。

何といっても歌詞がすばらしい。1番で歌われる学校時代の甘酸っぱい回想。

Carried your books from school
Playing make-believe you're married to me
You were fifth grade, I was sixth
When we came to be

Walking home every day over
Barnegat Bridge and Bay
Till we grew into the me and you
Who went our separate ways

そして2番では大人に成長し、成功の階を上った男の苦い述懐が歌われる。

Headed for city lights
Climbed the ladder up
to fortune and fame
I worked my fingers to the bone
Made myself a name

Funny, I seem to find that
no matter how the years unwind
Still I reminisce about the girl I miss
And the love I left behind

聴きながら読んでみてほしい。あえて訳さなかった。この短い曲の中に、一編の物語が含まれている。一言一句も揺るがせにできない歌詞だ。そして、ことばの中に潜んだ微妙なニュアンスを抽出するフランキーの並外れた表現力に気づいてほしい。かれが発する、「本」「学校」「毎日通った」「バーガネット橋」「別の道」「街の灯」「名声」「おかしいな」「過ぎ去った」「少女」という種々のことばに喚起される映像を。

 

ぼくがフランキー・ヴァリの名前を初めて知ったのは、リッキー・リー・ジョーンズのアルバム『パイレーツ』に含まれた「リヴィング・イット・アップ」を聴いてからだ。

Rickie Lee Jones Living It Up - YouTube

歌詞の内容からジェームス・ディーンやみたいな風貌をイメージしたが、どちらかといえば顔立ちはルー・リードに近かった。さらに言うならサブちゃんを連想した。いや、実際に北島三郎をみたときに、フランキー・ヴァリみたいだなと感じたんだけど。

 

kp4323w3255b5t267.hatenablog.com

 

ところで、ぼくが“My eyes adore you”のシングルを買ったのはいつだったかしら。ずいぶん昔のことだから覚えていないんだけど、白状すると「君の瞳に恋してる」と勘違いして買ったんだよね。

ボーイズ・タウン・ギャングのヴァージョンのほうが日本では有名だろうけど、やっぱりオリジナル版があってこその“Can't Take My Eyes Off You”だと思うな。

 

さて、「瞳の面影」の成功と並行して、本家もふたたび快進撃をはじめる。この時期のフォー・シーズンズは音が溌剌としていて、聴いていて心地よい。代表的なナンバーを2曲ほど紹介しよう。

Who Loves You”のPVは、ザ・フーの“Who Are You”によく似ている。

The Who - Who Are You? - YouTube

どちらが先かはわからないが、この時期、2組のバンドは同じツアーでステージを共にしている。影響し合ったと考えてもよいだろう。つけ加えれば、フォー・シーズンズザ・フーと比べても遜色ないポテンシャルを持つ強力なライブバンドだった。

Frankie Valli And The Four Seasons– Reunited Live 1980 (Full Album) - YouTube

 

 

ゲリー・ボルチdrとドン・チコーネbのリズムセクションは強力。コーラスワークは鉄壁。この「1963年12月(あのすばらしき夜)」ではボルチがリードヴォーカルを務め、ヴァリは要所を抑えるにとどまっている。親分は若い衆を温かい目で見守っているが、じつはフランキー、<1970年代、ヴァリは耳硬化症に悩まされ、1970年代後期は耳ではなく記憶を頼りに歌っていた>のである。(80年代には治癒。< >内はWikipediaより)。

On Stage Frankie Valli and the Four Seasons 1978 - YouTube

 

そのハイトーンを駆使して、60年代に数多のヒットを放ったフランキー・ヴァリ。その後もかれは、映画『グリース』のテーマソングを大ヒットさせるが、冒頭に掲げた『瞳の面影』は、駄曲がなく撓みのない構成と、東西腕っこきのミュージシャンを惜しげもなく使った豪華なレコーディングと、チャーリー・カレロの華麗なるアレンジメントとによって、誰にでも自信をもって勧められる傑作である。

そしてこのアルバムには、レコードB面オーラスに“Swearin' to God"(邦題:神に誓って/全米6位)が収められており、そのことがさらに作品の評価を高めている。

ディスコ時代の幕開けを告げる、ポピュラー音楽史的にも重要なナンバーだけど、ただ踊らせるのを目的とした他とは違って、40年の時を経ても鑑賞に耐えうるクオリティが保たれている。Youtubeには数多くの “Swearin' to God” がアップされているけれども、いちばん音質がクリアーだったのは上掲のコレだった。あーもう説明ァぬきだ。10分間の法悦境に浸ってくれ兄弟!

 

……なあ、信じられるか?これが記憶を頼りにした歌唱だと、にわかには信じられない。まさに神がかり的じゃないか。

 

 

ケニー・ノーランは佳曲を書けるSSWだが、ぼくはリズミカルなコレが好き。

Kenny Nolan - You're So Beautiful Tonight (1979) - YouTube

 

 

 

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