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鰯の独白

鰯は、鮪よりも栄養価が高いのです、たぶん。

なあ、なあ? ですます

 

30分で手短に話すよ。

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いろんな価値観がある。思想信条は人それぞれ違う。同一はまずあり得ない。ぼくはそれを前提に相互理解を求めている。

説得したいわけじゃない。考えを改めろと迫っているわけでもない。だのにきみたちはどうしてそう頑ななの。もう少し余裕を持って答えてくれないか。

簡単に結論づけて、勝手に見切りをつけて、それで勝っただの論破しただの思ってンならそりゃ大間違いだ。

寸止めしたのが分からないか。誤謬の指摘を避けたのに気づかなかったかね。ぼくはとどめを刺さなかった。それは優しさゆえじゃない。考える余地を残しておくためさ。決裂すれば忘れてしまうだろ?忘れてしまえないよう、あえて留保したんだよ。

きみの、そうだなA君にかんしていうなら、きみの根本的な誤りは三権分立を理解していないところ。きみが言わんとしているのは即ち立法の解体だ。課題を解決するのに人の介在が邪魔だと言っている。合理性を極めれば、行政の目標が達成するとでも思っている。甘いよ。社会はきみのようなお利口さんばかりじゃない。ぼくみたいな莫迦のほうが多数を占めるんだ。その莫迦どもを効率よく働かせればよいという、きみのビジョンとやらは独裁制ときわめて近しい。きみの思考からは衆愚への幻滅が透けてみえる。でも、そこを指摘したらきっと決裂するでしょう。だからぼくは明言を避けた。きみが決定的に拗らせないよう、あやふやに疑問を呈しておいた。

さてB君、きみの国防論もまた一方的だ。きみが守りたい対象、協調したい国、敵対してもかまわない国や地域、それら全部がことごとく為政者の都合のよいようにカスタマイズされている。しかもきみは国家と「私」を内面化・同一化しているから、そこから離れた客観的なものの見方を備えられないでいる。ぼくは訊ねたね、戦う口実を探しているのかと。上から目線だと感じただろうが、やんわりとたしなめたつもりだ。ねえ、どうしてきみは指揮官みたいな思考をするの。歩兵の立場に立ってものごとを考えられないの。ことば使いこそ丁寧だけれども、きみの考えかたは短兵急だ。危なっかしいよ。だからぼくは最後の問いに答えなかったのさ。きみがもやもやとするように。むしゃくしゃした気持ちでいられるように。「知らないんなら自分で調べな」と。

ああ、ぼくだってむしゃくしゃしたさ。当然だろ。あなたの考えは◯◯みたいだねと斬って捨てれば溜飲も下がる。でも、かかる問題を簡単に腑に落としてはダメなんだ。自分の考えに間違いはないか、行き過ぎや思い上がりはないかを検証するには、ぼく自身も違った角度からの考えを進めなきゃならない。それはシンドい作業だけれど、サボれば後々ツケがまわる。自分と反対側の意見に耳を傾け、妥協点や打開策を考えるのは大事なことだ。アウフヘーベン止揚)とまでは行かずとも、相互理解の端っこを掴むところまでは何とかたどり着きたいじゃないの。

だってA君、エリートである)きみが日々抱える鬱憤は(かつてのぼくのようだし、今もなお自分の中に澱む昏い感情だ。そこは素直に認めたい。だからでき得る限り弱みをさらした。きみの不躾なボディブローを受けるために「自己欺瞞」というガードを緩めて。

そしてB君、きみの威勢のよい口ぶりは、ぼくの周りにいる何人かにとてもよく似ている。だけど現実の世界では、お互いにうまく調節しあわなければならない。ぼくのやや左な政治的スタンスをかれらは危険とみなすだろうか。それともただの、平和ボケのお気楽なオッサンだと笑うだろうか。

どちらでもないように思う。中・韓を蔑み、日本こそが最高と思いこむ(それが排除の論理だとは気づかない)人たちにも、家庭や恋人があり、夢や希望もある。そんな簡単に、紙くずをゴミ箱に捨てるように人間関係を断ち切ることはできない。なぜなら同じ庶民であり市民であり大衆であり……仲間であるからな。

愚かしさなら五十歩百歩さ。ぼくの中にもヒーロー待望やポピュリズムへの傾倒が無きにしも非ずだから。そこは自覚しておきたい。自虐的になり過ぎず、だけど己に厳しく。きみたち若者は旧いOSをどんどん新しいのに交換すればいい。ぼくの根っこの部分は変わらない。OSはもう交換不可能だけど、ガラクタなりに何か気がついたら、随時ヴァージョンアップしていこう。それでも目障りならば、どうか無視して先を進んでくれ。

その間ぼくは、お花畑を守っている。