鰯の独白

鰯は、鮪よりも栄養価が高いのです、たぶん。

【お知らせ】『ワレリアさん』を再掲します。

 

 いったん下書きに納めていた記事、『ワレリアさん』を再掲します。自分でも好きなエントリーだから、少しでも多くの人に読んでもらいたい。 

kp4323w3255b5t267.hatenablog.com

前々回のエントリー、『ワレリアさん』を、事情によりいったん下げます。しばらく経ったら再び掲載します。削除ではありませんし、内容も変更しません。理由は後日お話します。申しわけありませんが、ご理解のほどお願いいたします。〈7月11日・鰯〉

  引っこめた理由を説明しますね。

 先週の金曜日、母が倒れたんです。庭先で転んで、したたかに頭を打った。ぼくが抱えあげたときには、後頭部が血だらけだった。これはいかんと119番をし、母は救急車で日赤に運ばれた。

 頭の傷はパカッと割れたんで、血が溜らず、それは不幸中の幸いだった。だけど、頚椎を損傷したのが原因で、右手が上がらなくなった。今も手の神経は不自由で、あまり動かない。が、リハビリの効果があってか、少しずつ動くようになった。母は今も、かかりつけの病院に入院している。

 数日間、母の意識は夢とうつつをさまよっていた。喋ることばに辻褄があうようになってきたのは、ここ2, 3日のことだ。それまではかなり混乱していた。自分がいまどこにいるのかも認識できていない状況だった。

 母のさまよいをすぐに発見できなかったのは、ぼくの過失だ。自責の念にかられて、すこぶる落ちこんだ。数日前に投稿した『ワレリアさん』が、痛手に拍車をかけた。母について書いた文章が、ブログに掲載され続けていることに、後ろめたさをも感じていた。

 だから、母の病状が快復に向かうまで、『ワレリアさん』を封印したのだ。

 

 そんな事情のあるさなかに、父を独り置いて宮崎に向かうのはためわれた。水曜日の傍聴はやめておこうかと、何度も悩んだ。けれども、ぼくには見届ける義務があった。前の記事にも述べたように、それは自分の勝手な思いこみに過ぎないのだが。

 このことは、伏せていようと思った。SNSはもとより、知人にも伏せていた。打ちあければ「やめとけ」と忠告されるだろうし、うるさいスズメどもが、「病床の母親を置いて裁判所通いかよww」と囀ること必至だったから。

 だから傍聴が終わり次第、ただちに延岡を離れた。前々の記事を午後11時に投稿したのは、そういった理由からだ。ぼくは7時前には自宅に帰り着いていた。いつものように親父のF2ライトを支度し、それから母の入院先へ向かった。それから大急ぎで書いたので、ああいった正確さに欠ける記事になった。言い訳がましいが、そのへんは斟酌願いたい。

 翌日の木曜日からふだんどおりの仕事をしていた。ささやかだけど、大切な業務があった。地元の自治体と協力し、自分が中心となって企画した仕事だった。なんとか金曜日の開催にこぎつけて、ホッと一息ついた。そのころにはようやく母の意識も復調していた。ネット以外の日常は、こんな具合だった。

 こうやって実生活をさらけ出すのは、苦労話をしたいわけではない。できるならばこんなことを書くのは今回限りにしたい。しかし土曜日の晩に、自分と自分の職業のことを取りざたしているツイートを見た。それを見たぼくは、激しく動揺し、そして憤った。だから、簡単に説明しておいた。

 今日は休日なので、朝から母の入院先へ向かった。母は元気そうに微笑んで迎えてくれた。ぼくは試しに聞いてみた。

「こないだ話してくれた、ロシア人の同級生の名前を覚えてる?」

「あら、何度も言ったじゃないの。ワレリアさんよ、ワ・レ・リ・ア」

「(じつはもう発表しているけど)そのこと、書いてもいいかな?」

「いいよー。わたし、ケイスケの書く小説、好きだもん」 

 その瞬間、昨日みたツイッターでの不愉快な感情は、一掃された。

 それまでの、どうやって反論しようか、どう相手を打ち負かしてやろうかという企みが一挙に氷解してしまったのだ。

 ぼくは、人を潰すような文章を書きたくない。

 ぼくは、人と、それから自分を、生かす文章を書きたい。

(その心境の変化は、以下のツイートをご覧ください。→ http://twilog.org/cohen_kanrinin/date-150719

f:id:kp4323w3255b5t267:20150719114712j:image 母が入院した翌朝にみた朝焼け。

  先日ぼくが投稿したしみったれた記事に、「備えよ!常に!」さんから、心温まるメッセージをたまわった。

(略)このお節介な傍聴体験を小説にしていただきたい。往復の車中の主人公の意識の流れ。もちろん音楽がもう一人の主人公です。

 とてもじゃないが書けませんよセンパイ、と恐縮したが、今では、いつか書けるかもしれないな、と思い直している。

 書きますよ。

 これはSNSで出会うことのできた、かけがえのない友だちとの、新たな誓いだ。

 その約束は、いつか、きっと果たす。

 イワシは弱虫だけど、義理堅いんだ。