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鰯の独白

鰯は、鮪よりも栄養価が高いのです、たぶん。

もうひとつの 『鰯の独白』

 

 先日、Twitterに、ブログ名の由来を示した。

そーなんだよなぁ。おれがブログを開設した理由は、通りすがりに、山之口獏の「鮪に鰯」を知らないやつだと見くびられて、カーッとなったからなんだ。<鰯は、鮪よりも栄養価が高いのです、たぶん。>という惹句を先に思いついて、それから「鰯の独白」という名前を決めたんだよ。一年とちょっと前にね。 4:10 - 2015年1月5日 

  なぜこんな弁明をしたのだろう。ひとつはタイムラインに山之口獏の「鮪に鰯」の文字が飛びこんできたからだ。が、それだけではない。別の理由がある。

 もうひとつの『鰯の独白』が意識の片隅に引っかかっていたからだ。

 

 前々から気にはなっていた、〈iwasinodo……〉と検索をかけると、〈鰯の独白〉が候補にあがるが、このブログではない、もうひとつの『鰯の独白』があることに。気がついたときには既に表示されていたから、名づけた日時は向こうが早かったのだろう。ぼくのほうが後出し。だから、いささか後ろめたくもあった。

 むろんタイトルを拝借したわけではない。自分で思いついたブログ名だし、愛着もある。「鰯の毒・吐く」というダブルミーニングを指摘されてからは尚更、替えるつもりも毛頭なかった。

 が、気にならないわけがない。先日あんなことをつぶやいてしまったのも、なにか漠とした、わだかまりみたいな感情があるのだろう。だとしたら確かめてみよう。これもなにかの縁だと思いたって、先輩格の『鰯の独白』に訪問してみた。

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 ページ冒頭の絵と表題をスクリーンショットした。
 

 それは想像していたものとは違った。ぼくはひょっとしたら、魚類に詳しい方がイワシの生態にかんする研究を詳細に記しているのではないかと想像していたのだが、そのあては大きく外れた。もうひとつの『鰯の独白』。その正体は印刷しても二枚強の、短編小説だった。

 元祖『鰯の独白』は、2013年4月23日に最終更新されている。ぼくがこのブログを始めたのが同年の12月24日。だからやはり、ぼくが後発になる。

『鰯の独白』の結構は、単純そのものだ。大洋を回遊するイワシのひとりごと。奇をてらったところはまるでない。

 だけど、その素朴な文体には、深淵を覗きこんだときのような、得体の知れなさがある。どこまで潜っていっても到達できないような、底なしの感覚がある。それと同時に、ひどく懐かしくもある。このような感覚はぼくも確かに経験したのだが、それがいつだったか思いだせない……そんな焦りにも似た気持ちを駆りたてられるのだ。

孤独であればあるほど、世界は澄んでいって、生きやすくなった。

海はただ寂しいほどに静かになる。

海は孤独の本質なのだ。また孤独は海の本質なのだ。

 読みはじめてすぐに、こんな箇所に躓く。そう、この短編小説には本質しかない。語られるべき筋はなく、読む人を喜ばせようとする企みもない。ただただ、大洋を回遊するイワシの群れの、その中の一匹の心情を書き表しているだけだ。

 けれども、その純粋さは狙って書けるものではない。

 短い文章だ、これ以上を引用してしまったり、解説してしまったりする愚は避けたい。訪問していただいて、全文を読んでいただくのが、いちばんだと思う。

 朝森 顕さんの『鰯の独白』を――


鰯の独白 - 朝森 顕 | ブクログのパブー

 

 こちらもどうぞ。どことなくユーモラスな)傑作です。


SO LONG GOODBYE - 朝森 顕 | ブクログのパブー

 

 こんなことをいったら鰯の先輩に失礼かもしれないけれど、ぼくはこの『鰯の独白』を読んだときに、もうひとりの自分がいる!と思ったんだ。

 まるでドッペルゲンガーのようだと。