鰯の独白

鰯は、鮪よりも栄養価が高いのです、たぶん。

レスリー・ダンカン 「もしもあなたのこころを変えられるのなら」

 

Joanna Newsom

 拙ブログ「鰯の独白」のアイキャッチ画像の女性は誰か? という質問がありました。じつはぼくも知らずに貼りつけたんだけど、調べてみたら、ジョアンナ・ニューサムという、けっこう有名なアメリカの歌手でした。


Joanna Newsom - "The North Star Grassman and the Ravens" (Sandy Denny cover) - YouTube

  かの女の、ふくろうとハープの画をどこで見つけたかというと、サンディ・デニーの『The North Star Grassman and the Ravens(邦題:海と私のねじれたキャンドル)』の画像を探していたときに、ぐうぜん発見したんだ。

 他のも観てみたけど、正直いって音楽はビジュアルほど魅力的ではなかったな。

 本家を聴いてみようか。この弾き語りヴァージョンの説得力といったら!


Sandy Denny - The North Star Grassman And The Ravens - YouTube

『海と私のねじれたキャンドル』のジャケット写真が大好きだ。ビル・エヴァンスの『アンダーカレント』と双璧をなす。写真を撮ったのはKeef(キーフ)。かれの写真はどれもみな潜在意識に訴えかけるね。いつまでも、眺めていられる。

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 先日、某所でこれがかかった。寒くなると聴きたくなるよね、で意見が一致した。

 

 ぼくは女好きだ。違った、女声好きだ。巧い女性のうたを聴いていると、気持ちが安らぎ、こころ穏やかになる。

 ただしDiva(ディーヴァ)はカンベンだ。「歌姫」なんて好きじゃない。歌いあげるのはよしてくれ。アレサ・フランクリンは大好きだけど、アレサの真似っこは聴きたくないよ。ソウルに欠けた、無意味なメリスマはやめてくれ。

Aretha Franklin - I say a little prayer ( Official song ) HQ version , Photos / Photoshoots - YouTube

 だからぼくが好きな女性歌手は、少し偏りがある。叱られるかもしれないけど、ジャニス・ジョプリンが苦手でした。いまでこそ素晴らしいと言えるけれど、そう思えるまでには長い時間がかかったな。あまりにも下手くそなバンドが、ミラクルな歌声(倍音出まくり)に引っ張られているのを許容できるまでは。


Janis Joplin - Ball And Chain (Amazing Performance at Monterey) - YouTube

 ……いかん、「ボールとチェーン」を観ていたら泣けてきた。軌道修正。

 

 ここ20年ほどでも、ビョークカサンドラ・ウィルソントーリ・エイモスなど、ぼくの胸を打ち、かきむしる女性シンガーには幾人も出会った。けれども、聴いていてしっくりくるのは、やはり70年代に活躍した女たちである。

 北米だとやはり、ジョニ・ミッチェル。どんなときに聴いても、ぼくには心地よく響く。かの女の代表作を紹介しよう、「ヘルプ・ミー」。


Joni Mitchell - Help Me (1974) - YouTube

 あーたまんない。ミドルエイトの「あなた踊ってくれば? でも、あの娘のストッキング、伝線してるけど。あー、気分悪、ムカつくー」のくだりが、最高に気分よい。また、それに絡むラリー・カールトンオブリガートがまたニクい。女性SSWと職人系ギタリストの絡みは、聴く愉しみのひとつだけど、次にあげる二つは、その典型的な例だ。

Maria Muldaur - Midnight At The Oasis (1974) - YouTube

 ご存知、マリア・マルダーの「真夜中のオアシス」。艶っぽいギターはエイモス・ギャレット。コケティシュな魅力にあふれた歌をうまく引きたてている。

Money - Season of Lights - Laura Nyro 1977 (Live) - YouTube

 ぼくの永遠のNO.1女性歌手、ローラ・ニーロ。ライブ盤『光の季節』は、隠れた名作。腕っこきのメンバーを束ねるギタリストは(当時のカレ氏)ジョン・トロペイ

f:id:kp4323w3255b5t267:20141223193732j:plain ちなみにこのジャケットの絵は谷内六郎

 

 その、ジョニやローラに匹敵するくらい個人の領域にまで迫ってくる歌手がいた。好き嫌いがわかれる人だけれども、今世紀に入って再評価の機運が高まっている。

 ジュディ・シル。至高のバラード「The Kiss」とどちらにするか迷ったが、代表作に挙げられるこれを選ぼう。

 神さまと近づきすぎたのかもしれないね、かの女は。

 

  今回は好きで好きでたまらなくて、いつ聴いても感動する歌ばかりを採りあげているけど(ぼくを以前から知っている人は、あーまた言ってらぁと苦笑するくらい定番の)、ジャズ・コーラスのジャンルからも一曲ご紹介しておこう。


" FOOL ON THE HILL " SINGERS UNLIMITED - YouTube

 これはシンガーズ・アンリミテッド1971年の傑作『ア・カペラ』に収録されているが、ビートルズナンバーでオリジナルを凌駕した数少ない例である。とんでもなくプログレッシヴなアレンジ。「自分の葬式でかけてほしい音楽」の有力候補だが、このグループの最大の魅力は、なんといっても紅一点ボニー・ハーマンの清楚な声質だ。

 

 で、プログレッシヴで清楚といえば、この人を忘れちゃならない。ルネッサンスアニー・ハズラム。『シェエラザード夜話』より、「オーシャン・ジプシー」。


Renaissance--Ocean Gypsy (The Original Song) - YouTube

 アニーは発音がいいんだ、子音の歯切れのよさが安逸なムードに流されない理由。強さと優しさが同居した、リアリティにあふれたファンタジー。

 これと似た系統の英国の女性歌手として、マギー・ライリーの名前もあげておこう。

Mike Oldfield - Moonlight Shadow ft. Maggie Reilly - YouTube

 マイク・オールドフィールドの『クライシス』に収録されていた。親しみやすい素朴なメロディーとマギーの飾りっ気のない歌唱は、いつ聴いてもこころ癒される。

 

 癒される、なんて使いたくないことばを使ってしまったが、ぼくが女性ヴォーカリストに求める要素は、やはり「癒し」ということになるのだろう。前述の、アレサにせよジャニスにせよ、そこに身を委ねられるような包容力を見つけられるから、長く聴いていられるんだ。歌は巧いに越したことはないけれど、ただ巧いだけじゃ、人の気持ちを惹きつけられないんだよね。

 今回は、意識して有名な曲を貼りつけてみたけれど、最後に聴いてもらいたい歌があるんだ。前にあげた歌よりは知られていないかも知れないし、他の歌手よりも知名度は低いだろう。でも、ぼくにとってはかけがえのない女性だ。知らない方は、ぜひ記憶にとどめてください。

 レスリー・ダンカン

 はじめてこの歌をラジオで聴いたとき、「変声期直前の少年が歌ってる」と勘違いした。透明な哀しみを帯びた声質がぼくの琴線に触れた。あの、はじめて聴いたときの不思議な感覚はいくつになっても変わらない。いまだに惹かれる。アラン・パーソンズ・プロジェクト『イブ』の、最後を飾ったバラードを――。


The Alan Parsons Project - If I Could Change Your Mind - YouTube

 

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レスリー(レスレイと表記される場合もある)・ダンカン。1972年のセカンドアルバム『アース・マザー』のジャケット写真。エルトン・ジョンがとりあげた「ラブソング」やピンク・フロイド「狂気」の参加などで知られるが、このひとの素朴で穏やかな音楽は、より多くの人に聴いてもらいたい。

 Lesley Duncan "Earth Mother" - YouTube

Lesley Duncan-The 40th Floor - YouTube

Elton John & Lesley Duncan "Love Song" - YouTube

 

【関連エントリ】

ゴナ・テイク・ア・ミラクル / ローラ・ニーロによせて - 鰯の独白 

クリスマスまで待てない - 鰯の独白

カレンに花束を! - 鰯の独白

 

5年前の大みそか、mixi日記にこんなエントリーを載せている。これがレスリー・ダンカンという名前をこころに刻んだきっかけだったのかもしれない。

レスリー・ダンカン | mixiみんなの日記

 

 

【追記】

この記事もこっそり忍ばせておこう。エヴァ・キャシディ。(2016年12月17日)