Chicago - Full Concert - 07/21/70 - Tanglewood (OFFICIAL)
(いちおう断っておくと、上の画像の男はピーター・セテラ(b)ね)
やあ、ご機嫌いかが?
今日は休日だから、好き勝手に書かせてもらうよ。
古くさい音楽を、ぺたぺた貼っつけるのさ。
おれはテリー・キャスが大好きなんだ。
テリー・キャス? そいつは誰だって?
シカゴの初代ギタリストにしてリード・ヴォーカリストだ。
そして、上に掲げた映像を観ればすぐさまわかることだが、かれこそがシカゴのリーダーであった。
まだ未熟なバンドを鼓舞し、統率し、高みに引っ張りあげている。
ラムやセテラも奮闘しているが、テリーの馬力にゃ敵わない。
他のメンバーの何倍も視界が開けている。タイムの解像度が圧倒的に違う。そのことがよーくわかる、勝れたドキュメントだ。
ジミ・ヘンドリックスが感心したというギターの腕前。
豪快に弾きまくるソロもいいが、コードワーク、カッティングの妙にも注目してくれ。
余裕あるタイミング。音の抜き差し。過不足なきテンション。温かく、ぶっとい音色。
白いレイ・チャールズと称された黒い喉。
ジョー・コッカーやデニス・ウィルソンに共通する声質。男くさくってシブい歌声。
なあ、テリーの喉とギターを聴いてみないか?
Terry Kath - "Free" - Chicago.wmv
『Ⅲ』より「フリー」。名刺代わりの一発。快速で駆けぬける2分15秒。
『ミシシッピー・デルタ・シティ・ブルース』。初出は『XI』だが、録音は『V』のセッションで。なぜこれがお蔵になっていたのか? と首を捻るほど凄まじいテイク。どファンキー!
Terry Kath and Chicago at the Arie Crown Theater 11-72
CHICAGO - Dialogue (Part I and II) - YouTube
もう一丁『Ⅴ』より、初来日公演のオープニング曲だった「ダイアログⅠ〜Ⅱ」を。テリーが「変革」を訴え、セテラが「穏健」に収めようとする「対話」形式の傑作だ。ロバート・ラムが、シカゴの思想的中枢を担っていたことがよくわかる。72年、“Arie Crown Theater”でのライブでのインストルメンタル“Devil's Sweet”を聴いてもらえば分かるけど、タングルウッドと比べたら演奏力が格段に向上している。尚、「ダイアログⅠ〜Ⅱ」はみんなの大好きな「サタディ・イン・ザ・パーク」の次に演奏されます。
NEW EXCLUSIVE 70s LIVE Full CHICAGO Terry Kath Peter Cetera ROCKY MOUNTAINS Caribou NEDERLAND 1/3
もう一発、ファンキーなブツを『Ⅵ』より。ちょうど10分からスタートするジェイムズ・パンコウ(Tb)作「ホワッツ・ジス・ワールド・カミン・トゥ」は鼻血が出そうな強力ナンバー。けっきょくテリーがいちばん美味しいトコを持っていってる。タワー・オブ・パワーに負けてないぞ! カリブー・ランチ・スタジオでのレコーディングセッション風景を。
ラウヂール・ヂ・オリヴェイラ(per)を迎え入れた『Ⅶ』より、ビーチ・ボーイズ3人のコーラスをフューチャーした屈指のバラード。テリー(ベースを弾いている!)の、さりげない歌い方がたまんなく、優しい。
もう一曲『Ⅶ』より、テリーの渋い歌声を堪能できる『ビブロス』を。もしかしたらシカゴの中でいちばん好きな曲かもしれない。ため息。
【追加】テンポの速いリハーサル版も聴いてごらん。甲乙つけ難い出来だ。
最後は、ふたたび『Ⅴ』より沁みるナンバーを。こういう「校歌」だったら、おれも覚えておきたいよ。
【追加】72年、日本武道館での雄姿を拝もうか。手抜きなしの、熱い演奏だ。
Terry Kath and Chicago in Tokyo 1972
今回、テリー・キャスに焦点を絞ってご紹介したが、シカゴの魅力はそれだけにとどまらない。ロバート・ラムの作曲能力、ピーター・セテラの明朗なポップさ、『Ⅵ』~『Ⅷ』にかけてのホーン&リズムセクションの充実など、お伝えしたいことがらは山ほどある。とくに『Ⅶ(市俄古への長い道)』のすばらしさなんか夜を徹して語りたいところだが、それはまたの機会にとっておこう。
テリー・キャス。男の中の男。
1978年に拳銃を暴発させ、この世からあっけなくオサラバしたのが、つくづく惜しまれる。
だが、まさしくかれは「漢」だった。残された楽曲の数々を聴けば、それがお分かりいただけよう。
前々回でちらと触れたザ・フーにしてもそうだが、ロックの「男性性」にかんして、おれは否定的にはなれない。たとえかれらが、屹立した男根(by. 山川健一)を象徴していたとしても、それがイコール女性蔑視へと直ちに繋がるものではないと考えるからだ。
男らしさとはなんだろう? ほんとうの「男らしさ」とは。
少なくとも、逞しさと優しさは、両方兼ね備えてなくてはならぬ。
不器用で、ぶっきらぼうで、それでいて繊細で。
増幅された音塊から垣間見える、人間味とでもいおうか、男くささの正体を文章に表すことは、かなり難儀な作業である。
ただ、 男が「ガッツなんだな」、「ハードでストロングな男だ」と、男を称賛する意味というかココロは、単純かもしれないが、まことに深い場所から湧きだす、感情のため息なんであると、どうかご理解いただきたい。
おれはやっぱり、いにしえのロックが好きなんだ。どうしても離れられない、それは腐れ縁みたいなもんだが、想像する余地くらい残しておいておくれよ、ハニー。2018/01/27 更新