鰯の独白

鰯は、鮪よりも栄養価が高いのです、たぶん。

究極の9曲(ぼくの選んだジョン・レノン)

 

ビートルズのこと、みんなさんざん書いているからなあ。いまさらぼくがなにか上書きすることもないと思うけど、根っからのジョン派として、これだけは言っておきたい。

ぼくは初期のレノン・ナンバーが大好きだ!

言わせてもらいますとね、過小評価されすぎなんだよ。なので今回はぼくが聴くたびに「サイコー!」と叫んじゃう歌を何曲かピックアップしましょう。あ、有名なのは省きます。それとポール色が強いのも(や、マッカートニーも好きさ。でも本稿の趣旨はレノンの魅力を伝えることだから)。

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それでは最初のカード。セカンドアルバム『ウィズ・ザ・ビートルズ』より「ナット・ア・セカンド・タイム」。

You're giving me the same old line
I'm wondering why
You hurt me then You're back again
No, no, no, not a second time

「また前と同じこと言いやがって。理解できないな。おれを傷つけて、戻ってきて。ノー・ノー・ノー・二度目はナシだ」

 

お次はレノン・ナンバーが満載の『ア・ハード・デイズ・ナイト』から切れ味抜群の1分50秒、「ぼくが泣く "I'll Cry Instead"」。

And when I do you'd better hide all the girls
I'm gonna break their hearts all 'round the world
Yes, I'm gonna break them in two
And show you what your loving man can do
Until then I'll cry instead

「女のこたち、みんな隠れていたほうがいい。ぼくは世界じゅうの女性の気持ちを壊すつもりだから。そう、まっぷたつに引き裂くぜ。そしてきみは恋する男の仕打ちを見る破目になる。それまではぼく、泣いている」

 

『フォー・セール』シブいなー。あまりにも好きだから2曲貼っちゃおう。まずは「アイム・ア・ルーザー」を動画で。ジョンがハーモニカを吹いたあと、ジョージに横顔を向けて目くばせする瞬間が最高にカッコいい。


The Beatles - I'm a Loser

What have I done to deserve such a fate
I realize I have left it too late
And so it's true, pride comes before a fall
I'm telling you so that you won't lose all

「どうしてこんなに不運なんだろう。身を引くのが遅すぎたみたいだ。プライドが身を滅ぼすって、それホントだから。あんたに忠告しとくよ、いずれぜんぶ失うぞ」

 

続いてはカントリーフレーバー漂う佳曲。邦題「パーティーはそのままに」って、そのまま直訳じゃんか!

I don't want to spoil the party so I'll go
I would hate my disappointment to show
There's nothing for me here so I will disappear
If she turns up while I'm gone please let me know

「パーティーの途中だけどオレ先に抜けるわ。ガッカリしてるとこ見られたくないもんね。ここにいたってしゃあないでしょ、だからオレ消えるわ。もしかの女が戻ってきたら、頼むオレに報せてくれ」

 

『ヘルプ』にはジョンの代表作が詰まっているけど、ぼくのイチ推しナンバーは、ジョン自身が嫌っている「イッツ・オンリー・ラヴ」。

(今はなき)さいたま市ジョン・レノンミュージアムの展示品で、ボブ・ディラン「ラモーナに」の楽譜の裏に、この歌の詞が走り書きしてあるのを観た。でも、歌詞は載せないでおこう。ジョンはたぶん、ありがちな韻を踏んだのがこっ恥ずかしかったんだと思う。

 

ラバー・ソウル』にもジョンの名曲が目白押しだね?だけどもぼくがいちばん好きなのは、ジョンみずからが失敗作と認める「浮気娘 Run For Your Life”」なんだ。

You better run for your life if you can, little girl
Hide your head in the sand little girl
Catch you with another man
That's the end ah little girl

「さっさと逃げるがいいさ小娘。砂の中に頭から突っこめ小娘。他の男と一緒のところを見つけたら、一巻の終わりだぜ、小娘」

※ジョンは、エルヴィス・プレスリーの「ベイビー・レッツ・プレイハウス」の一節をまるごといただいてるんで、気まずかったみたい。

 

リボルバー』にもジョンの切れ味勝負のナンバーが揃っている。シングルB面の「レイン」もいいし、「シー・セッド・シー・セッド」もいい。ポールとの共作だろう「ドクター・ロバート」も痺れる。だけどぼくは、これまたジョンの嫌いな「アンド・ユア・バード・キャン・シング」が一等好きなんだよなあ。

When your prized possessions start to weigh you down
Look in my direction, I'll be 'round, I'll be 'round

「ときにきみの地位や財産は、きみ自身の重荷になるだろう。そんなときはぼくの方を向いてごらん。ぼくはいるよ、きみの周りに」

 

さて、ここで引き返そう。66年にツアーを中断したビートルズは、スタジオの迷宮で精神世界の探求に耽る。それはそれでまた面白いし、オノ・ヨーコと出会った後に変わった作風もぼくは大好きだ。ただ、初期にあった辛辣さ、皮相さ、荒っぽさ、激しさ、嫉妬深さは次第に影を潜める。それが正直いって物足りなく感じるところだ。ビートルズは一般的にお行儀のよいバンドだと思われがちだが、実際にはリバプール出身の「街場のアンちゃん」だったし、とくにジョンの素行は「(ローリング・ストーンズの)ミックやキースよりもずっとおっかない」ものだった〔要出典〕。隠しようのない不良のたたずまいは、むしろカヴァーに表れているのかもしれない。

Well, he put thumb-tacks on teacher's chair
Put chew'n gum in li'l girls hair
Now, Junior behave yourself

「そうさ、先公の椅子に画びょうを仕込んで、女のこの髪にチューインガムくっつけて。おっと小僧、やりすぎなんだよ」

ラリー・ウィリアムズの暴力と性的暗喩に満ちたアブナい歌をビートルズは3曲も録音している。自分が書きたくても書けないワルな側面を端的に表した歌詞とメロディーが、ジョンの声質と気持ちにフィットしたのだろう。

 

さあ、あと10曲くらいは容易に挙げられそうだが、ジョンゆかりの番号にちなんで9曲で打ち止めとする。ラストナンバーはジョンのソロアルバムといっても過言ではない※『ア・ハード・デイズ・ナイト』から選ぼう(ポールの作品が3曲しかなく、残りはぜんぶジョン主導の歌ばかりだ)。デル・シャノンふう哀愁のロッカバラッド「アイル・ビー・バック」にしようかと迷ったが、やっぱりジョン・レノンにしか書けないシニカルなロックンロールで締めくくりたい。

I got something to say that might cause you pain
If I catch you talking to that boy again
I'm gonna let you down
And leave you flat
Because I told you before, oh
You can't do that

「おまえには耳の痛い話だろうけどさ、もしあいつともう一度話しているのを見かけたら、おれは失望するね。そして部屋を出ていくさ。前にも言ったはずだ。おまえの仕打ちったらないぜ」

くーっ、カッコいい。これだけ情けない心情をさらけ出してンのに、弱音というよりかむしろ強がりに聞こえる。これってやっぱりツッパリとしか言いようがないね(でも実はジョン、中産階級出身のお坊ちゃまだったんだ)。

 

 

 

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【おまけ】

以前2曲削除されていたので、格好の口実とばかり2曲追加します。


The Beatles - Help! [Blackpool Night Out, ABC Theatre, Blackpool, United Kingdom]

この「ヘルプ」は出色の出来。歌もコーラスも演奏もばっちり決まってる(ジョージの下降フレーズもピタッとはまってる)。スタジオ録音より良いかもしれないね。

ジョンのシブいソウルナンバー。紹介できたのが嬉しいよ。