鰯の独白

鰯は、鮪よりも栄養価が高いのです、たぶん。

poetry

支線=指の隙間から零れ落ちた言の葉

頭の隅っこに引っかかっている言葉を時々そっと取りだしてみる。 引っこめた記事に書き洩らした電車に関する記憶を書き連ねてみる。 隅っこに置いたまま干からびさせるにはあまりにもしのびないから。 初めて乗った私鉄は熊本電鉄で通称菊池電車という短い路…

息がつまる

毒つきたい。思うさま毒つきたい。 あいつとうとうおかしくなったかと噂されるくらい毒つきたい。 綺麗事ばっか言ってるといつか破綻をきたす。 常識に囚われてると迂闊に口も開けない。 毒つきたい。あゝ毒つきたい。 それで世間から見放されても社会から放…

いけにえの花

異端を極端として排除しないこと、だにゃ。 キミはぼくのことを普通じゃないというけど、その「ふつう」はどこに拠るの? 自分が普通だと思える根拠はなんなのさ。 極論は淘汰され、異論は排除され、選ばれしものたちの理想の国ができあがる? その中からま…

コキア

もうそろそろ気がついてもいいだろう? ぼくがおかしくなっているってことに。 どうすればいい?きみの考えるような、 人物になる方法がぼくにはわからない。 解決の道筋など訊かないでくれないか。 救済を求めているのはぼくの方なのに。 定められるものか…

暴動 There's a Riot Goin' On

その束の間を見ることで “Cut-Up Edition”

ときおり何もかも打ち棄てて、逃走したくなる。 ……ことばを失ってしまう。 なぜ、なぜ、なぜ。 どうしようもないな、 腐ってやがる。 見なくたって列挙できる。 パッと思いつくだけでも、 毎日毎日、 連日連夜。 しかし、どれくらいまっとうな報せがあっただ…

Oblivion Express

スランプである。調子がでない。何を書いても読んでも、真実味を感じられない。 こういうときは、何日か書くのを休んでいればいいのだ。後頭部にあるイメージの壺に着想のことばが満ちてくるまで。空っぽなのに無理やり捻りだそうとするから、チョロチョロと…

Eye in the sky

詩は時の権力を刺し、利いた風なことをぬかす輩をからかい、おべっかやへつらいを足蹴にし、あるいは自分をも嘲ってみせる。 けど、いちばん危険なのは、身近にいる人。傍にいる者ほど、害を被りやすい。詩作に耽る奴は、他人を顧みない。アート無罪だとし…

プレゼント

たくさんのプレゼントをきみからもらったけれど、 おれはきみに何もプレゼントしていない。 誰かれに愛嬌を振りまいているけれど、 きみに微笑ひとつも返したことがない。 酷いやつだ、 酷いやつだな、おれって。 きみに何を贈ろう? 何を贈ればいい? 何を…

男結び(対訳つき)

【熊本弁】 ば !? なーんばしよっとねイワシさんな あた不器用かねー見とられんばい 紐いっちょ結びきらんちゃ何事や ぎゃんこつも習ってこんだったな 男結びはホウ、こぎゃん要領たい なんも難しかこたなかろうたい? 理屈で考えるよか体で覚えなっせ さし…

オールモスト・ブルー

木曜日の 明けがた近く 新聞配達のバイクが次第に遠ざかる 町はまだ 微睡みのなか 誰かが裏庭の閂をこっそり抜いている 書きさしの手紙 破棄されたシナリオ 親しげな笑みは 誰かれとなく 振りまくものじゃない 田舎紳士の 気まぐれや感傷に いちいちつきあう…

Crucify

真夜中に書いた寓話 実相をトレースしたフィクション 女王様がお隠れになった 門を閉ざし鍵をかけた 見張り塔からずっと 動向を監視なされた されど御婦人がた 注意めされよ わたしがいない間に誰がなにを言ったか いったい誰が味方か敵か 逐一チェックされ…

忠犬イワシのバラッド

退屈な味の◯◯だった。 というフレーズが頭を過り、 さて、これをどう使おうかと、 あれこれ思案しているうちに、 初期に感じた新鮮な情動みたいなものが、 すっかり失せてしまっていることに気づいて そこで、考えるのを放棄する。 かように、 連綿と続く数…

レントより遅く

久しぶりに四行定型詩でも書こう。 Manic Mushroom. 名前は不明。 初っぱなはプレストで駆けだした。 人を出し抜けばいいと思っていた。 早ければ早いほどいいと思ったし、 速ければ速いほど優秀だと思った。 立ちどまるなと言い聞かせていた。 停まったら負…

波が立つ

それは退屈なイナカ町の噂話ってやつさ みんな好き勝手に陰口を叩いているだけ 狭い町だものそりゃあアッと言う間だよ かれとかの女ふたりの話題で町中大騒動 発端はこうだ倦怠を持てあますご婦人と 慰みものになっても平気な若いのがいて 人目を忍んで逢瀬…

テクニーク 〈Technique〉

1・2・3・4・5 1・2・3・4・5 エレガンスな解答をぼくは要求する きみの混乱したあたまで問題が解けるかな? まずはその「思い(Thought)」をいったん保留にし その「思い」とやらから離れて省察してごらん さまざまな夾雑物に影響されないよう祈るよ テク…

もの言わぬ瞳

再三再四 説明しようとし 懸命に理解しようとも努めた あらゆる信仰に疑念を抱いては お互いの自尊心を貶しあっていた だけど、もういいや もう終わったんだ ことばとことばの鎬を削りあうのは 会話の歯車が狂ってしまったいま 帰る道はあまりにも遠い 家に…

赤い靴

小学二年生のときに、 母が赤い靴を買ってきた。 日ごろ履きなれた白ズックと違って、 すこぶるしゃれたデザインの靴だった。 赤い靴を履いて歩く姿を想像すると、 ぼくはわくわくして、 なかなか寝つけなかった。 翌朝、颯爽と玄関を飛びだして、 赤い靴を…

夏のなごりの (朗らかな排除)

子どものころは一日が、一夏が、一年間が、いまよりもずっと長く感じられました。それこそ、無限に続くかと思われるくらいに。何も描かれていないスケッチブックのように、まだ開かれていない本のページのように、茫洋たる未知が、目の前に広がっていたので…

エミリーに薔薇を

註:これはウィリアム・フォークナーの短編小説について書かれた記事ではないことを、あらかじめお断りしておきます。 ひっそりと静まりかえった夜の庭園。 エミリーは息をつめ、忍び足で歩いている。 辺りには誰もいない、彼女ただひとり。 暗中模索のなか…

ドラムメジャーの少女

北の方へ行ったら お祭りがあるだろう 真っ直ぐな目をした 少女に会えるだろう 彼女にあったら よろしくと伝えてくれ あの娘はまったく おれの真実だった 責任感の強い子だと 教師はいった ありとあらゆる面で リーダーに相応しいと 紹介されたとき 少女はは…