鰯の独白

鰯は、鮪よりも栄養価が高いのです、たぶん。

Music

福岡史朗『4』のピアノ

福岡史朗2022年のアルバム『4』は、なかなかシブい作品だ。前作『プリズム』がカラフルな万華鏡みたいな音色だったから余計にそう思う。福岡自身がミキシングからマスタリングまで、手がけているせいもあるだろうが、全体にくぐもった、単色のローファイな音…

プリズムはカラフルなアルバム

えーと今から福岡史朗の昨年秋に出た今のところ最新アルバムを聴くんですけど『プリズム』。プリズムって名付けた理由わかるよね、サウンドがカラフルなんだ。さっそくタイトル曲「プリズム」のギターの音色が聞こえてきた。このアコースティックギターとピ…

マッカートニー 見過ごされがちな50の傑作

さて、これからポール・マッカートニーのことを書こうと思う。簡単ではないが、やってみようと決心したのは、あるカヴァーヴァージョンを聴いてのことだった。※ open.spotify.com アメリカの二人組ファンクユニット、スケアリー・ポケッツが、凄腕ギタリスト…

福岡史朗『=7』に寄せて 瑣末な事柄を穿ちつづける

『=7』は福岡史朗、7枚めのアルバムである。 福岡の音楽の虜になってから早幾年、彼の驚異的な創作意欲はとどまることを知らない。2020年も収穫の季節に二枚組が届けられた。あいかわらず装丁がすばらしい。見開きの紙ジャケット。 福岡史朗 @fukuokashirou …

福岡史朗 “+300gram” レビュー

福岡史朗、2019年10月6日リリースの新譜“+300gram”は快作である。2019年製のスマートなグラムロックだ、たくさんの人に聞いてほしい。 もともと福岡のつくる音楽は簡素かつソリッドだったが、今回は300gramsというスリーピースバンドを結成し、前作までの課…

福岡史朗 “KING WONDA NUGU WONDA IA KIKELE”

“KING WONDA NUGU WONDA IA KIKELE”は、福岡史朗+2STONE、2018年リリースのアルバムである。 福岡史朗のベストアルバム『HIGH-LIGHT』を当ブログで紹介したのが二年前。それから前作『SPEEDY MANDRILL』のレヴューも書いたし、 彼と彼の仲間たちのライヴを鹿…

劇画『I・飢男』に登場したザ・フー

左:ピート・タウンゼンド、右:ロジャー・ダルトリー mainichi.jp 著名な劇画原作家、小池一夫さんが平成31年4月17日に亡くなった。82歳だった。 ぼくは小池一夫作品の良い読者ではない。代表作の『子連れ狼』も全巻は読んでいない。だが、青春のときどきに…

ザ・ベスト・オヴ “鰯の聴いた音楽” 2018年2月~10月

Twitterにモーメントという機能がある。使い勝手は良くなかったが、公式仕様だったこともあり、重宝していた。ところが先日(10/23)より、スマフォのアプリで作成できなくなった。タブレットでもダメだった。自分の投稿したツイートを手軽に編集できないの…

“ラスパルマスのキリスト” 松本隆『微熱少年』より

たとえば、カエターノ・ヴェローソ71年の作品「ロンドン・ロンドン」を聴いていると、ふと松本隆の詩作を想起してしまう。(亡命先である)英国の曇天の空の下で陽光のふりそそぐ故郷ブラジルのクリスマスを想う、みたいな対比の拵えが。 open.spotify.com …

80年代の精粋

ぼくが青年期に聴いた80年代の音楽の中から、いまだに好きでたまらない曲をいくつかあげてみよう。 ①Durutti Column “Sketch for Summer” 1980 ヴィニ・ライリーのワンマンユニット、ドゥルッティ・コラム。ファーストアルバムの1曲め。イントロの鳥の囀り…

楽しいときも

ぼくは『「少年の心をもった音楽家」エルメート・パスコアール in やつしろハーモニーホール(5月10日)』というタイトルで、このブログに記事を書こうと試みた。 が、書けなかった。 エルメートの音楽はまさに「翁にして童」と喩うべきものだった。ぼくはそ…

ローラの肖像(1947年10月18日~1997年4月8日)

ぼくは四六時中ローラ・ニーロを聴いているわけではない。 だけども年に何度か、ローラの歌声に耳を傾ける夜がある。聞いたら最後、確実に引き込まれる。他の歌い手と違って聞き流せない。集中を余儀なくされる。余所見のできない感じがする。 ところが先日…

ナタリア・ラフォルカデ「アルマ・ミア」

今日は、3月11日だ。 東日本大震災から7年間の歳月が経過した。 復興の掛け声は国内をかけめぐるが、魂の救済は一向に為されていないように感じる。 日本社会という括りの中で生活していると、時どきぼくは大切な何かを見失っているような気がする。 感情が…

ロバート・パーマーの余韻/ウィンウッド・フェリー&パーマー③

「ウィンウッド・フェリー&パーマー②」の続きです。 ③ロバート・パーマー サクサクッと紹介しよう。世辞や追従は彼の好まぬところだろうから。ロバート・パーマーは前述の二人に比べれば知名度がやや劣る。が、私見では並び称されるべき英国人ソウル・シン…

老いの入舞、ブライアン・フェリー/ウィンウッド・フェリー&パーマー②

「ウィンウッド・フェリー&パーマー①」の続きです。 ②ブライアン・フェリー ロキシー・ミュージックのことを2年ほど前に書いて、 そこで「いずれフェリーについても書くつもり」だと宣言してしまったため、書かずに済ますわけにはいけない。小生さほど書く材…

スティーヴ・ウインウッドの海洋音楽/ウィンウッド・フェリー&パーマー①

ぼくがよく聴く音楽ジャンルのことをアメリカではクラシック・ロックと呼ぶそうだ。 古典的なロック、か。悔しいが、反論できないな。すでに評価の定まった音楽ジャンルだもの。モダンじゃないのにモダンジャズ、みたいなものだ。ニール・ヤングが好きな人は…

ピッキン・アップ・ザ ・ピーシズ Pickin' Up the Pieces

昨年(2017)下半期で気に入った動画を拾い集めてみました。 1976 - Ugly, Dirty and Bad / Brutti, Sporchi e Cattivi たとえば、このシーンに遭遇しなかったら、私が『醜い奴、汚い奴、悪い奴』というイタリア映画を知ることはなかっただろう。YouTubeは未…

マンドリルたちが駆け抜けた夜

不覚にも風邪をひいてしまったが、福岡が九州に上陸するとあらば、万難を排して駆けつけねばなるまい。11月18日(土)ぼくと妻は夕刻の鹿児島中央駅に降り立った。 鹿児島市住吉町の“GOOD NEIGHBORS”はしゃれた感じのカフェだった。小腹のすいていたぼくは、…

ジムが書き、グレンが歌う『ウィチタ・ラインマン』。

今年8月8日に亡くなったグレン・キャンベル。ぼくのクルマでは20曲入りベスト盤(写真)がへヴィーローテーションでかかっている。 Glen Campbell - "Wichita Lineman" - Original Stereo LP - HQ とりわけ「ウィチタ・ラインマン」は、何べん聴いても飽きる…

“Lazy Day”

ときどき、ラジオや有線でかかった音楽に「あーこれ前から知ってるんだけどタイトルなんて曲だろ?」と思い煩った経験、あなたはありませんか? 私はしょっちゅう、あります。 8月の終わりごろ、郊外の店でラーメンをススッていたときに、その音楽は流れて…

福岡史朗 “SPEEDY MANDRILL”

福岡史朗2017年のアルバム『スピーディー・マンドリル』、ぼくは毎日聴いている。 どんな書きだしの感想がいいだろうか。ぼくはずっと考えていた。悩んでいるうちに月日が経ってしまった。おまけにプールサイドで滑って転んで、突いた右手首を痛めてしまった…

樫本大進の『神話』 2017年7月11日 於:熊本県立劇場

樫本大進(ヴァイオリン)とアレッシオ・バックス(ピアノ)の二重奏を聴いた。 翌朝になっても、ぼくの耳の奥には、まだ余韻が残っている。 熊本県立劇場の長い残響にも濁ることなく、樫本の伸びやかで透きとおった音色とアレッシオの繊細なタッチは、コン…

用意周到なサイケデリア、あるいはフォーク・ロックの集大成/ライリー・ウォーカー『ゴールデン・シングス・ザット・ハヴ・ビーン・サング』

Ryley Walker “Golden sings that have been sung ” ライリー・ウォーカー『ゴールデン・シングス・ザット・ハヴ・ビーン・サング』 こちらはAmazonで注文したライリー・ウォーカーの『ゴールデン・シングス・ザット・ハヴ・ビーン・サング(16年)』。 The …

Back to 90'sの趣き/トッド・ラングレン『ホワイト・ナイト』

『ホワイト・ナイト』は、トッド・ラングレンが2017年に発表したアルバムである。 トッドと誕生日が1日違いの)リュウジが持ってきてくれたCDを、ぼくはクルマの中で何回も聴きながら、感想を書かなきゃなと焦りつつ6月をすぎ、7月に入ってしまった。 『ホワ…

身も蓋もなく

今回のエントリーは我ながらとりとめないと思うよ(と予防線を張っておく)。 「ちょい悪オヤジ」の編集者が新雑誌を創刊し、その紹介記事がひどいと話題になっている。ちょい長いが、一部をまるっと引用してみよう。 「ちょいワルジジ」になるには美術館へ…

ジェネシス━━また下らない名前のバンドだ。

<ジェネシス━━また下らない名前のバンドだ。 でも彼女がそのネーム入りのシャツを着ていると、それはひどく象徴的な言葉であるように思えてきた。起源。> 村上春樹『ダンス・ダンス・ダンス』(上)講談社文庫、旧版72-73ページより抜粋 ピーター・ガブリ…

ah, me too.(あ、私も)。

これ知ってる? BBCが制作したジョニ・ミッチェル「フランスの恋人たち」のアニメーション映像。最高! Joni Mitchell - In France They Kiss On Main Street - Old Grrey Whistle Test - BBC - 1976 テンポ・ルパートの極端さはローラ・ニーロを凌ぐが、何…

“Heavy Cream” ジャック・ブルース・ソングの魅力

先日、某アカウントで「私の考える最強のロックトリオは?」というアンケートを見かけた。出題者の偏った好みを反映してか、四択の1位がクリーム(33%)、2位がジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンス(28%)、3位がピンク・クラウド(6%)、その他33%とい…

加藤ひさしの「ソングアプローチ」

昨夕、NHK-FM「ソングアプローチ」の最終回を聴いた。ザ・コレクターズの加藤ひさし氏がJ-POPの歌詞に辛い注文をつけ、近藤サト氏がフォローするという痛快な番組だった。歌詞(と言葉)の今日性とは何か?という問題をいろんな角度から捉えていた。毎週日曜…

日常に鳴ってる音“HIGH-LIGHT” 福岡史朗

福岡史朗2016年発表のベストアルバム、“HIGH‐LIGHT"を購入。 街中のCDショップに行くたび、気後れしてしまう。自分の知らない音楽がこれだけたくさんあるのだと思うと。しかも、手にとって聞くまでもなくおれにとってはどうでもいい音楽がほとんどで、おれの…